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今回は『Re:ゼロから始める異世界生活アニメ』4期が放送されればその内容となる6章プレアデス監視塔編についてネタバレ解説していきます。
今回は6章の2つ目で内容としては22巻になります。
内容は簡易的にまとめていますので詳しく知りたい方は是非書籍を買いましょう!WEB版と書籍版では変更点がありますが、書籍版に沿った内容で紹介していきます。6章はここからどんどん面白くなります!
さらにリゼロ2期アニメを全話無料視聴する方法もご紹介します!
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リゼロ22巻ネタバレストーリー
22巻ネタバレはこちらの動画でも解説考察しています。
https://www.youtube.com/watch?v=-NjxAsooe8g目覚めた場所にて
「なんだよその目!俺が悪いってのかよ!?俺は悪くねぇ!」「スバル、あまり幻滅させないでくれ」「少しはいいところもあると思ったけど所詮バルスね」ユリウスとラムの冷たい眼差しを送る。仲間たちと合流したスバルは二晩眠り続けており、当然仲間達はスバルの安否に心を砕いてくれていたはず。しかし目が覚めれば半裸の女性にもみくちゃにされていた。安堵を通り越して落胆。それを通り越して軽蔑したとしても不思議はない。
やっとのことで落ち着き、その場に座り込み話し合いをしようといった姿勢にも関わらず、「ん〜お師様お師様〜」とシャウラはスバルの腕を解放せず今も頬を擦り寄せてきている。「いやらしい」とその様子にラムが軽蔑の視線をスバルに送る。膝の上にはベアトリスもいた。そしてその場にはアナスタシアとメィリィもきた事にスバルが顔が見れたと安堵する。スバルは皆を見渡すとパトラッシュとレムがいなかった。それを察しユリウスは後で案内するという。
上におり詳しくは後で言うが、治療中と言っておこうと言う。その発言にスバルは「レムを治せるってことか!?」と聞く。しかし、パトラッシュが怪我をしておりその治療だった。そしてエミリア達は戦えない人ばっかりはぐれちゃってすごく心配したと言い、ベアトリスなんて凄く取り乱していたとか。皆の調子を確認しつつ最後にラムを見る。「その目は何?不愉快な目を向けてくるのをやめなさい」と切れ味鋭い言葉を言う。どう見てもいつものラムだった。
ラムはスバルが気を失う直前、スバルを庇って異形のケンタウロスに立ちはだかっていた。ラムはツンとした態度だったがエミリアが「ダイジョブよスバル。ラムはちょっと照れてるだけ。きっと起きた時にスバルにだきしめられてたからバツが悪いんだと思うの。可愛いわよね」と言うと「エミリア様!」と大きく反応する。「そういや竜車で起きた時、ねかされてたスペースに妙な空白が…てっきりベア子だと思ったけどあれってまさか…」「ーー忘れなさい」「いやでも…」「わ・す・れ・な・さ・い」「わ、忘れた。はい、忘れた」「それでいいわ。ポンコツ…ではなくエミリア様を気をつけてください」「ポンコツ…それどういう言い間違え?全然似てないけど」そんな会話をしてアナスタシアに何があったか覚えてるか聞く。
スバルとラムが意識を失ってから賢者さんと交渉できるのはうちだけやったと言う。しかし「さっきまで押しても引いてもほとんど喋らんかった人がナツキくんにメロメロなんやもん」と言う。「無口?これが?」「もうもう!さっきから…これじゃなくシャウラッスよ、お師様〜」むくれたシャウラがスバルを上目ににらみつける。「いきなり高感度MAXでこられると相手が美人でもこっちの好感度のゼロだから戸惑うどころの話じゃないんだよな…」とスバルが言う。
お師様の臭い
「あ、今あ−しのこと美人「って言ったッスか!?」「都合のいい耳だな、オイ!」とそのまま腕から引き剥がそうとするも怪力から逃れられない。そこで、話し合いが優先だとしてお前ちゃんと話せよというと「お師様の言うことならえんやこら〜ッス」と言う。そこでユリウスが「あなたはプレアデス監視塔の賢者という認識でよろしいでしょうか?」と聞くと「ぷい〜ッス」「答えろよ!話すって言ったばっかじゃん!」と答えなかった。
しかし「大体お師様が言ったんスよ。誰に何を聞かれても余計なことは言わない話さないいっそぶっ刺せって。あーしはそれを守ってるだけッス!」と言う。スバルはシャウラにデコピンすると「虐待ッス!暴力振るったッス!法廷で会おうッス!」「どこで学んだんだその言い回し…とにかく俺以外の奴ともちゃんと話せよ」と言う。そして再度賢者なのか質問すると「その質問の答えはムズいッス」と言う。
「お師様が探してるのがシャウラならあーしのことッス。でも探してるのが賢者シャウラならあーしにもよくわかんねッス」と言う。シャウラの賢者の呼び名への無自覚。それが意味するのは。そこでユリウスが賢者シャウラの功績は長く人々に語り継がれている、それは君の事だと思って間違いないかと聞くとシャウラは自分の事でお師様がくれた名前だが、他のシャウラなんかいらないと言う。
そこでアナスタシアが4枚の硬貨を取り出す。貨幣と国の歴史は切っても切れないから硬貨にはその国の歴史が刻まれると言う。聖金貨が『神龍』金貨が『初代剣聖』銀貨が『賢者』銅貨が『ルグニカ王城』とのこと。そして銀貨の『賢者』はーー「若いイケメンのお兄さんだな、シャウラとは似ても似つかない」とスバルが言う。するとシャウラが「へーうまく刻み込むもんッスね。お師様そっくりッス」と言う。スバルの事をお師様というシャウラにどこが似てると聞くと、「かなり特領を捉えてるッスよ。髪の毛あるし、目と耳は二つ付いてるし、花と口もあるッス」と、そんな幼稚園児レベルの捉え方だった。流石に銀貨の人と似てないかな、とエミリアが言う。
そんなガバガバ判定でよくよく俺をお師様とか言えたなと聞くとシャウラは「臭いッス。こんな鼻が曲がりそうなぐらいどす黒くてえぐい臭いプンプンさせて平気な人なんて、お師様以外に考えられねッスもん」と言う。スバルがそんなにひどいの!?と聞くと「マジでひどいッスけど、ゲロとかじゃなく、また嗅ぎたくなるゲテモノ系ッス!」と言う。そこで次にラムが「あなたはシャウラだけど『賢者』ではない、それなら『剣聖』と『神龍』に心当たりはある?」名前はレイドとボルカニカよ」と聞く。
これまでリゼロ世界で『臭い』に関する事と言えば、魔女の残り香ですよね。
そして21巻でシャウラが「…三つ」と言ったこと。シャウラは魔女の臭いや魔女因子の数で、スバルをお師様と判断したのではないでしょうか?
お師様の名前
すると「うげぇッス」「『棒振り』レイドと皮肉屋のボルカニカは古馴染みッスもん。別れてからいっぺんも会ってないッスけど元気でやってるんじゃないッスか?」と言うとラムは「レイドは死んでいるわ、とっくに」と言う。すると「マジッスか!?殺しても死なないような奴だったのに死んだッスか!?なんで死んだッスか!?変なもの拾い食いしたッスか!?」「寿命よ。天命には誰も逆らえないわ」と言うと「寿命…ああ、そっか。レイド一応人間だったんスもんね」と言う。心なしか寂しげな態度をする。
シャウラはボルカニカは元気なのか聞くとラムは「そっちはドラゴンだから」と言う。「そッスか。レイドより、ボルカニカの方が死んでららよかったッスけどね〜」とすごい言われようだった。そしてラムは「いたはずの賢者、あなたのお師様はいったい何者なの?」と聞くと本人と一緒なのに知らないのかと言われ、ラムはそれにトイレの便器に頭をぶつけて色々抜けたと言う。すると「お師様またやったッスか…」と言う。スバルは同情的な目でシャウラに見られる。
「じゃ、あーしの口から大発表ッス。お師様の名前…そう、その名も高き大賢人!この世界で賢者なんて呼ばれるとしたら相応しいのはお師様だけ!」「ーーフリューゲル」「お師様の名前はフリューゲルッス。大賢人フリューゲル、シャウラのお師様ッス」という。スバル達の反応はまちまりなものとなった。なにせその名前、覚えがある。だってそれは「…木ぃ植えた人の名前じゃん」随分前に一度だけ運命の交差した偉人の名前だった。
それから一行は塔の内周を時計回りに登る、上の階まで数十メートルある大掛かりな螺旋階段を上っており、塔の最下層で待機するヨーゼフが豆粒みたいに見えた。最後尾ではシャウラがメィリィを背負っており「裸のお姉さんったらあんまり揺らさないでちょうだいよお」「ええー、人の背中に乗ってるくせに偉そうなちびっ子ッス」と会話をしていたが二人の息は合っている様子だった。先頭はユリウスとアナスタシア、その後ろにラム、スバル、ベアトリス、エミリアと続き、疲れたから階段を上りたくないとごねたメィリィをシャウラが背負ってもいいと自主的に申し出ていた。「まさか無類の子供好きってわけでもなさそうだが…」とスバルは考える。
そこてシャウラを見ていた事で反応し「あーしの魅力に読ん百年越しに気付いたッスか!?」と言う。「お前がメィリィとポニテで遊んでるとこ悪いんだが…」と言うと「ポニテじゃないッス、スコーピオンテールッス」と謎にポニテを否定する。そして再度お師様はフリューゲルの事かと再確認をする。「とはいえ、フリューゲルさんって『フリューゲルの大樹』の人だろ?」「なあにそれ?タイジュって大きな木のことお?」とシャウラの背中のメィリィが首を傾げる。
フリューゲル参上
そこでリーファウス街道ってとこに雲に届くんじゃないかってでかい木が生えてて、それがフリューゲルの大樹って呼ばれてたんだとスバルが説明する。メィリィはそんなにすごいなら見てみたいかもと言うとスバルは「すまん。あれは俺が切り倒した」「お兄さんのいけず!」と会話する。
フリューゲルの大樹。それは約一年前、スバルも参戦した『白鯨討伐戦』の切り札になった一本の木。白鯨との戦いのトドメを刺すために切り倒され、魔獣を下敷きにし十四年の歳月をかけて剣鬼の剣をその命に届かせた。「それを植えたフリューゲルさんとまさかこんなところで再開するとはな…そういや賢者って呼ばれてるとは聞いてたけど」「だけど何をしたのかイマイチわからない賢者なのよ。そもそも賢者扱いされていた事がおかしいと言えばおかしいかしら」とベアトリスが言う。そこにラムが「よほど自分の功績を喧伝するのがうまかったのか…バルスみたいな奴ね」と言う。
するとアナスタシアが「この感じからするとシャウラさんとフリューゲルさんの二人の功績が後世だとひっくり返ってる。もっと言ったらなすり付けてるんと違う?」と言う。それをシャウラに聞くと「正直お師様の考えはわかんないとこが多いッス、でもお師様は目立つのあんま好きじゃなかったんで面倒そうな噂話の矛先をあーしに向けて逃げるってのはお師様らしいかもな〜って思うッス」と言う。
そこでなんで後世に賢者って伝わってるのかと疑問を持つと「前に読んだ本にフリューゲルさんの名前が広まった理由は大樹の上の方に『フリューゲル参上』って刻んであったからなんだって」とスバルは修学旅行生かよと自己顕示欲が爆発したエピソードに仰天する。「確かに俺も似たようなことしようとしてレムに止められたけど…実際に実行してたんならフリューゲルさんも相当アホだな」と言う。
そして上階に辿り着くと巨大な扉があった。しかしそこで気付く。竜車と地竜はどうやって最下層までいったのか。するとエミリアが「シャウラが運んでくれたのよ。下までひょいって持ち上げて」と言いスバルはドン引きする。それから、ここがプレアデス監視塔って実感すると、感慨していた所、シャウラが「プレアデス監視塔ってのは仮の名前、仮の役割ッス。こうしてお師様が戻ってきたんなら、ここは元の役割に戻るッスよ」「知りたいこと、気づきたいこと、何でも探せる大図書館」それを聞いた瞬間スバルは表情に激震が走る。なぜならそれは、スバル達が求めてやまなかった答えそのもの。それが欲しくてここまで来た。「大図書館プレイアデスは、お師様のお帰り大大大、大歓迎するッス!」とシャウラが言う。
『フリューゲル参上』が出てきましたが、スバルがロズワール邸に来た頃イ文字を勉強する時に最初、紙に『ナツキ・スバル参上!!』と書いていましたよね。この共通点は一体・・・
大図書館プレイアデス
辿り着いた目的の部屋の扉は緑の蔦で覆われていた。その中は部屋中も緑に征服されており、何百年も放置された秘境の遺跡という感じだった。シャウラはここを『緑部屋』と呼んでいるそう。そしてスバルが部屋に入り振り返ると入口が蔦で封じられた。ラムによればこの部屋は入れる人数が限られ、部屋の主の意向だとか。その主が精霊だそう。
そして緑の支配する部屋を進むとレムとパトラッシュがいた。するとパトラッシュの傷口の周囲が淡く温かな光が取り巻いていた。ラムによれば精霊の力で治癒が早まる効能があるとのこと。しかし精霊が見えない事にどこにいるんだと聞くと、この部屋そのものが精霊だと言われる。そしてラムがレムの傍にいくと蔦が勝手に椅子を作る。
それから、パトラッシュの傷は治してもレムに効力はなかった。傷でも病でもないものは癒せないと精霊は判断したようだった。そこで変えたいなら塔に来た目的を果たさなければということで『大図書館プレイアデス』その答えを手に入れてレムを取り戻す。そして、ラムがレムを見守り、スバルは部屋を出る。
皆と合流し、シャウラに大図書館プレイアデスについて聞かせてくれと聞く。すると「さっきも話したッスけどこの塔の真名を大図書館プレイアデスッス。入口があったのが第五層の『ケラエノ』階段下の第六層が『アステローペ』ここが第四層の『アルキオネ』」と言う。現在スバル達がいるのは塔に出入りする扉があった第五層より一つ上の階層へ螺旋階段で上っていた。
そこはワンフロアぶち抜きではなく、円形の広い空間にいくつもの部屋が点在するようになっている。螺旋階段は四層の中心に繋がっており、全ての部屋を巡るには結構な時間を要するだろう。そして四層はシャウラの住処みたいなもので好き放題に散らかしてるから見られると恥ずかしいと言う。また、普段はこの階層から砂丘の様子を見張って、塔に近づく奴は片っ端から打つべし打つべしッスと言う。半ばわかりきっていたが、スバルを二度殺害し、チーム分断の一因にもなった監視塔からの白光はシャウラだった。あれのせいでとんでもない目にあったと言うと「塔のお邪魔虫を近づけない為の狙撃、ヘルズ・スナイプッス」と言う。
さらに「いやーでもヘルズ・スナイプがお師様に当たんなくてよかったッスね。ディメンジョン・ゲートが解除されなかったらあーし、当たるまで攻撃しっぱなしだったかもッス」と言う。新出の単語が多いとスバルが言うとディメンジョン・ゲートは塔までたどり着かせない為の小細工だと言う。つまり砂風にまぎれて空間の歪めていたトリックだった。シャウラはそれが最後に破けたことで、お師様だとわかったと言う。
プレイアデス七姉妹
そこにメィリィがお兄さん当たってたら死んじゃったんじゃない?と言うとシャウラが「ぶははは!な〜に言ってんスか。あーしのお師様があんなんで死ぬわけないッス。元々、お師様は死ぬんだか死なないんだかわかんないわけわかんない人なんスから」「でもでもお砂蚯蚓ちゃんはいっぱい攻撃されて死んじゃったわけだしい」「蚯蚓も熊も知ったこっちゃないッスよ。あーしのお師様は死なない、これが大事なことッス。もし死んでたら、お師様じゃないだけッスから」と言う。
シャウラがフリューゲルに寄せるそれは強固な理想だった。もしスバルがフリューゲルじゃないと知れたら恐ろしいという考えが一行によぎる。そしてシャウラは狙撃もお師様の言いつけだと言う。それから六層から四層の話は聞いたからその上はと聞くと「三層『タイゲタ』からは試験会場ッス。書庫に入る権利を試すッスよ」と言う。
大図書館プレイアデスの名が偽りでないなら当然知識を蓄える書庫がある。そこにスバル達の目的があるはず。そこで試験会場という言葉が気になる。するとユリウスが「それが目下、我々にとって最大の難所となっている障害だよ」と言う。スバルが寝てる間に皆は試験に挑んでいたようだった。しかし、進捗は皆無だったと言われる。また、試験という言葉にスバルとエミリアは散々振り回された嫌な思い出があると話す。
そしてスバルは道中シャウラを呼びかけ皆に聞こえないように小声で話す。「俺と仲間たちに危害を加えるな」と言う。するとシャウラはOKだとお師様の新しい命令として覚えたと言う。そしてスバルはもう一つ質問に「マイア、エレクトラ、タイゲタ、アルキオネ、ケラエノ、アステローペ」「上から順番にこのプレイアデス監視塔の階層の名前で合ってるか?」と聞く。「合ってるッスよ〜。第一層が『マイア』第二層が『エレクトラ』ッス」「やっぱりか。それなら…」そしてスバルは立てた六本の指にもう一本を加える。「それならメローペはどこにある?」その質問にシャウラは沈黙する。ただその沈黙は考え込むそれとは違い虚を突かれた驚きの沈黙だった。
そこでベアトリスがわけがわからんのよと聞くと「とある七姉妹の最後の一人の名前だよ。プレイアデスなら、七つ揃わないとおかしい」名前が振り分けられた階層、モチーフとされた名前は本来七姉妹。プレイアデス七姉妹はスバルが知る星の構造の逸話の一つ。だとしたら最後の一人の名前が付けられた階層が隠れてるはずだ。「七層か、そうでなきゃゼロ層か?それがあるはずだ」「ゼロ層ッス。お師様が名付けたんスから当たり前ッス。ただ、お師様がいなくなってからできた場所なんでどこにあるかは知らないはずッスけど」と言う。その話にベアトリスが驚く。
「元々、お師様は死ぬんだか死なないんだかわかんないわけわかんない人なんスから」「あーしのお師様は死なない、これが大事なことッス。もし死んでたら、お師様じゃないだけッスから」というシャウラの言葉。スバルの死に戻りに近しい発言にもとれるような気がします。
モノリス
「ゼロ層ってことは一層の上…いやお前は六層を最下層とは言わなかった。だとしたらあるのは上じゃなく地下の方…」「ーーダメッスよ」確かめようとするスバルにシャウラが言葉を遮る。「まだ条件が満たされてないッス。お師様は道の途中であーしに会いに戻ってきてくれてそれで満足ッス。だからゼロ層はダメッス」と言う。これまでにない危険性を孕んだ言葉に聞こえ、スバルはこれ以上聞かなかった。
シャウラの会話とここまでの情報から浮き彫りになるフリューゲルの異常性。何のことはない。彼もまたスバルと同じだ。スバル、アル、ホーシン、そしてフリューゲル。この世界にいないはずの知識を持ち込みそれを後世へ残した存在。フリューゲルもまた、スバルと同郷の異邦人であると。「数百年前か」フリューゲルはこの異世界で何を思い何を考えなにを目指し求めたのか。
それから緑部屋から対局の位置にある部屋に来て、普通の階段があった。四層と三層を結ぶ階段は常識的な高さだった。ただ、上がればいい螺旋階段とは違い試験をクリアできなければ上がったことにならない場所。そして部屋にはいって感じたのは違和感しか存在しない空間だった。全方位が白く染め上げられた不思議な空間。床を床と認識できず階段を見失ってしまったら遭難しかねないのではと思うほど。
そしてその正面に石版のようなものがあった。四角く滑らかな質感で作られた一枚の板切れ、あえて別の気取った言い方をすると『モノリス』と言ったところ。モノリスは不思議な浮力で床から数十センチの位置に浮いている。そしてこれに触れば試験が始まると言われ、エミリアがカウントを取り、ゼロでスバルは触れてみる。次の瞬間、モノリスが内側から光り、一気に増殖を始めた。
背後から次々に複製したモノリスを出し凄まじい速度で不規則な位置に配置されます。そして脳内に直接『シャウラに滅ぼされし英雄、彼の者の最も輝かしきに触れよ』と声が聞こえた。ユリウスがどうだろう、私達の最初の驚き、体験してもらえただろうかと言う。大図書館プレイアデス。第三層『タイゲタ』の試験。制限時間『無制限』挑戦回数『無制限』挑戦者『無制限』試験開始。
それからユリウスに注意事項があるから、近くのモノリスに触れてみてくれと言われる。そしてスバルはモノリスに手を触れると、猛烈に光、目の前のモノリスが消えた。「ふふふ、お師様、後ろッスよ」とシャウラが笑いながら言う。さらに、一枚のモノリスはスバルの後ろへいったが、他のモノリスは消えていた。ユリウスは「最初の状態に戻ったということだろう」と言う。そしてもう一度モノリスに触れると『シャウラに滅ぼされし英雄、彼の者の最も輝かしきに触れよ』と改めて出題される。
シャウラが語るレイド
つまり、再試験を受けられ何度でも挑んでいいということがわかった。また、闇雲に触れて回っても答えには至らなかったとユリウスが言う。そしてアナスタシアがナツキくんの出番やと言いシャウラに答えを聞き出してほしいと言う。そこで「お前が滅…ぼした英雄って言うのに心当たりがあったら教えてくれ」と聞くすると「殺した奴の名前をいちいち覚えてるなんざ二流の仕事。あーしみたいな一流は百から先は覚えちゃいねえッス」と言われる。「だろうね!」とスバルが予想した通りの答えだった。
しかしこれで終わっては話が進まないとしてユリウスが本当に覚えていないのかい?と言う。すると「塔に近づく奴らを片っ端からヘルズ・スナイプしてただけで死体はお外の魔獣が掃除しちまうッスもん」と言う。それに対しアナスタシアが「でもそれやとおかしない?塔ができた後のシャウラさんの行動とかかってるなんて時系列が変やわ。問題にするなら塔ができる前のことやないと」と言う。つまり『シャウラが滅ぼした英雄』は塔の建設前ということになる。
そこでスバルは「覚えある名前だとレイドは?お前が殺したんじゃないの?」と聞く。すると「ひぃぃぃぃぃ!!」と悲鳴を上げて飛びずさる。その勢いに落っこちたメィリィをスバルがナイスキャッチする。そこでスバルは「初代剣聖ってそんなに怖い人なの?」と言うとユリウスが「ラインハルトやヴィルヘルム様、アストレア家の祖に当たる御仁だ。剣の腕もさることながら人格者であったことは疑いようもない」と言う。
そこでシャウラ本人にユリウスがレイドの事について奇譚なくあなたの意見を聞きたいと言うと「人間のクズだったッス」「奇譚な意見をきかせてもらいたい」「なかったことにすんなよ!」とスバルがツッコむ。憧れの歴史に裏切られた節のあるユリウスにその真実が垂れ流される。「とにかく嫌な奴だったッス。悪ガキがそのまま大人になったみたいな性格で弱いものイジメとか大好きだったッス。あのクズから見たら大抵の相手は弱かったんで、もう誰と戦っても弱いものイジメッス。あーしも超やられたッス」とシャウラから憎々しい思い出が溢れる。
しかしそいつは無関係っぽいとスバルは後回しにする。そこで英雄をあてずっぽうで挙げてもらうのをユリウスとベアトリスに任せスバルはエミリアとアナスタシアを連れ詳しく周りを見て回る。パッと見、最初のモノリスと同じ大きさなのは7,8個。遠くにあるのはみんな小さい。そしてそもそも、試験と銘打っておきながらその回答の為の方法が他者頼り、それも本来、塔の管理者として置かれている存在頼りとはいかにもアンフェア。スバル達は結果的にシャウラと敵対することなく塔の中に入れたものの、そうではない場合は殺し合い。塔の中に入ったとしてもシャウラは倒さざるを得ない可能性もあり得た。
スバルの閃き
その場合、試験の合格なんて永遠に無理ということだった。クリアさせる気がないならそれが正解。でもガーディアンを置いてそのガーディアンを倒したら試験はクリアできない。そこでスバルが「ここは知りたい知識の得られる大図書館ってシャウラが言ってたろ?あれをシャウラが思いついたとも思えねぇしおそわった 通りにいってるとしたらこの図書館を作ってシャウラに任せたお師様だけ。お師様には図書館させるつもりがあるってことだ」と言う。
大図書館プレイアデスの創造主は建物の目的を機能させようとしていた。そのための篩にかける条件として試験とシャウラをここに残した。つまり「最初からシャウラと仲良くできる人間以外は利用できないって事か?」「でもシャウラは塔に近づく人は全部やっつけろッテ言われてたのよね?」とスバルとエミリアが話す。シャウラに下された命令は『塔に近づくものを例外なく排除』であり、スバル達はシャウラと友好関係を結べたのは偶然に過ぎない。
シャウラに負けた場合、シャウラを死なせた場合、シャウラに協力してもらえない場合いずれも挑む資格をなくすとそう結論づけるしかない。そこでエミリアは試験って『試練』と似てると言い出す。『試練』も一応挑戦は無制限でここも『試験』があるのは三層と二層と一層で3つで同じ。賢者の存在、400年の時間、そこを振り返るとあの魔女達の事が思い起こされる。エミリアとスバルが魔女たちの話をしたのは一度か二度だけ。試練の内容に触れてもエミリアは言葉を濁す為に追求していない。
しかし相変わらず『シャウラに滅ぼされし英雄』の名前はシャウラ頼りのままーー「…違うってことなのか?」「ここが解かれる事を想定してる場所だとしたらシャウラをどうにかできないと攻略できない。それがそもそも間違いなのか?」スバルは考える。魔女はしれんで人を試したが結果を出せない苦難は与えなかった。賢者が試験で人を試すなら結果を出せない苦難は与えないはず。「シャウラの存在抜きで塔を攻略できる可能性…」「俺達はフリューゲルの功績をシャウラのものと間違って信じてた。賢者の一番の功績は仲間と一緒に魔女を封印した事。だけど嫉妬の魔女は間違っても英雄じゃないし滅ぼされたわけでもない」「シャウラをシャウラと知らなくてもシャウラがあるとしたら、だ」そして「ベア子ちょっとこい!」とスバルは叫ぶ。
「その顔、ベティーの好きなスバルの顔かしら」「お前いつでも俺のこと好きだろ?」「特に、なのよ」と言う。するとスバルは「ムラクでちょっと高くジャンプしたい」「上からこのモノリスを見下ろしたいんだ」と言う。そしてベアトリスがムラクを発動し、ベアトリスの手を掴んだまま6,7mほどの高さまでジャンプする。本来は激突するはずの天井に体が当たらない。それ故に上空から部屋の全景を見下ろすことができた。「ーー思った通りだ」「目的果たせたかしら?」「おおよ。この場所最高に意地悪いぜ」
エミリアが試練の内容をスバルに話していないという事は、ジュースがペテルギウスだったことやフォルトナやパンドラのことも話していないという事かもしれません。ただ、5章でレグルスを倒した時にエミリアがどこで会ってたんだろうとレグルスの事を覚えていなかったで、エミリアの試練の記憶がどこまで鮮明かは不明ですね。
白い星空のアステリズム
軽やかに着地しスバルはベアトリスを抱っこしたまま「英雄の名前、わかったぜ」と言う。そこでアナスタシアがどうやって答えを出したか聞くと「これが解けないのはお前らが悪いわけじゃない解ける可能性のある奴がそもそもずっと少ない」と言う。そもそも問題の答えを知る可能性の時点で挑戦者が絞られている。「シャウラに滅ぼされた英雄ーーその名前はオリオンだ」と言う。
そしてスバルの出した単語に皆がシャウラに振り向く。すると「いやいやいや、あーしの知らない人ッスよ」と言う。しかしスバルは「そもそもこの問題のシャウラってのはこいつじゃない」と言うと「シャウラはあーしだけッスよ!お師様にもらった名前ッス!」「そのお師様がお前に付けた名前にも、そもそも元ネタがあったって話」と言う。
そこでエミリアが「シャウラの名前の由来って、もしかしてまたスバルだけが知ってるってこと?」と聞くと「俺だけってわけじゃないけどね。俺の地元の星の名前に『シャウラ』ってのがある。意味は『針』なんだけど、それが何の針かっていうと『サソリ』の針なんだ」と言う。スコーピオンテール、とシャウラが自分の髪型を強固に主張していたが、あれはある意味でのヒントだったのか、それともシャウラの天然なのか。いずれにせよ『シャウラ』=『サソリ』=『針』を想起させる条件はいくつかあった。
「言い伝えによると、英雄オリオンは調子づいたことが理由で嫌がらせに派遣されたサソリに刺されて死んで星になった。で、オリオンを殺したサソリもその功績で星になって、今でも空じゃオリオンはサソリにビビってるって話なんだが…」と説明する。そして「とにかく星を人とか動物とかの形に例えた星座って考え方がある。アステリズムって呼び方でもいいけどな。で、上からモノリスを見下ろしたら、だ」
最初のモノリスと同じ大きさのものは七つ、全部で八つ。オリオン座を形成する主要な星々の数も配置も一致する。そして『最も輝かしきに触れよ』と最後に結ばれたのであれば。「最初のモノリスがど真ん中、まぁアルニラムあたりとしておこう。そのまま星座の形をイメージしてオリオン座をなぞってやると」「最も輝かしきってのが意外と曲者な言い回しだ。実は星の光り方にも色々あって、ずっと明るいものもあればたまに強く光るものもある。
そういう意味だとオリオン座には最も輝く星が二つある」左上に位置するオリオンの右肩の『ベテルギウス』と右下に位置するオリオンの左足『リゲル』。恒常的に明るいのはリゲルだが、ベテルギウスは時折強く光る星。「俺だったらリゲルの方をとるな」と言う。ベテルギウスの響きには似た名前で嫌な思い出があるから。そうしてスバルは『リゲル』に位置するモノリスに触れる。
アステリズムとは、天球上で複数の恒星を連ねてかたどった天文集合体およびその口語定義である。星座同様、趣味の天体観測の対象や、簡易的な時刻や方角・天球位置の把握手段として親しまれてきたものも存在する。(wikiより)
また『リゲル』はレムルートのIFでスバルとレムの子供の名前ですね。
タイゲタの書庫
次の瞬間、眩い光りが部屋全体を包み込んだ。音も景色も置き去りにして何もかもが吹き飛び光が晴れた時、スバル達は石造りの空間、無数の書架に囲まれた部屋の中心に立ち尽くしていた。「やったわ!スバル、すごーー」「考えた奴性格悪ッ!!」「えええ!?最初にそんな反応!?」と歓喜の声を上げたエミリアにスバルの罵声が轟く。
「これで解けたのは逆に大問題だと思うぜ。実際フェアじゃねぇよ」「俺が物知りで解けたってより、俺みたいなのじゃなきゃ解けなかったってことの方が大いに問題なんだよなぁ」エミリアはわからない顔をするも説明が難しい。オリオン座の知識はこの世界では得ようのないことだった。もちろんシャウラが星の名前であることや星座の並び方から何まで全部スバルのいた世界の知識であり天体だ。つまりこの問題を考えた人間はスバルと同じ星空を知る人間。その最有力は賢者フリューゲル。
そしてアナスタシアが「ここの書庫としての役割ってなんなんやろね。どんな本があるんか興味深いわ」と言う。ユリウスが「シャウラ女史の説明では知識の宝庫、といった説明でしたが」さらにベアトリスが「アレの反応からしてそもそもタイゲタが開かれたのは初めてのことなのよ。見て回って確かめてみるしかないかしら」と言う。ベアトリスはいつもより早口だった。
「てっきりお前は禁書庫に嫌な思い出しかないと思ってたよ」「いい思い出ばっかりじゃないのはホントかしら。でもどんな場所でもあそこはベティーが400年を過ごした場所なのよ。それにスバルが『俺を選べ』って口説いた場所かしら。忘れようとしても忘れられる場所じゃないのよ」「お前可愛いなぁ」「むきゃー、かしら!」と微笑ましいやり取りをする。
そして本を手に取る。普通の本だったが、タイトルは『ノア・リベルタス』『エイゴン・ヴォラー』並べ方も無茶苦茶だった。そしてスバルはほんの背表紙を見て気付く。「これひょっとして全部人の名前か?」皆は知らない名前ばかりだと言う。スバルはそんな中、ふいに掠めたタイトルに指を止めた。本のタイトルは見知った名前。その本を抜き取り、なんとなしに手に取り開く。そして知人の名前が入った本の中身に目を通そうとしーー直後それがきた。意識が暗転する。
傲慢の魔女
ーー女、一人の女がいた。女と呼ぶことを躊躇するほど、まだ幼い女だ。痩せた体に粗末な服、日に焼けた褐色の肌に緑の髪。童女と呼ばれるような年代の女はしかし尽きぬ悩みに心を支配されていた。それは決して答えの出ない、女にとっては生まれながらの命題であった。正しき事と謝った行い。まだ童女であった女にはその理に悩み続ける理由があった。女の世界を白と黒、善と悪二つに割ったのは女の父だ。女の父は罪人の首をはね、咎に相応しい罰を下す行いを生業としていた。
「ーー処刑人」そう呼ばれる父の所業を処刑場の在り方を女は幼い日より目にしてきた。そこで女に『死』を見せ続けたのは他でもない女の父親の意思だ。世に存在する善悪の、己が処刑人として信じる在り方を父は女に伝えようとした。結果、女は命の尊さを人の生死の理を学ぶ以前に罪に相応しき罰を学んだ。罪人の魂は罰に相応しく穢れてゆく。父の教えをそう理解し、女は『罪に相応しき罰』の在り方を欲する
答えが天の恵みのように授けられたのは突然だ。父の酒杯を割り、女は自らの犯した罪に大いに怯えた。あるいは首を落とされることすら覚悟して、女は己の罪を父に告白した。「ーー自分の間違いを打ち明け、謝ったことは正しい」父は過失を許し、笑みすら浮かべて女に言った。その微笑みと頭を撫でられる掌の感触に幼い女は理解した。犯した罪を量る天秤は他でもない、罪人自身の心の内にあるのだ。たとえ誰が見ていなくとも、罪人の罪は己の心が知っている。
善悪はわからない。正誤は確実な指針はない。しかし罪の意識は己の中にある。女は理解した、満足した、天秤をようやく手に入れた。幼い女は命の尊さを、人の生死の理を知らぬまま罰に相応しき罪を暴いた。処刑人の父を見習い、罪に相応しき罰を下すため、女は日の下に歩きだ出す。罰されるに値する罪人のその心を暴くために。それは善悪を、正誤を、実と不実を二分する女にとっての人生の集大成。
幼い女の問いかけにあるものは笑い、あるものは困り、あるものは戸惑う。だが女の問いかけに答えた結果は全員が同じだ。罰に相応しき罪は己の心の中にある。周りを見る、誰もいない。ここにはもう罰を受けた罪人しかいない。粉々に砕け散った破片の人々と最後に父の破片を踏み越えて、女は自分に与えられた宿願を果たすために、罰に相応しい罪を求めて有るき出す。ーー『傲慢の魔女』は罪を問い、罰を与え、罪人をさばき続けた。
見知った魔女の始まりを見届け、スバルの意識が痛みとともに回帰する。「づぁーーッ!!」べりべりと音を立てながら意識が本から引き剥がされる。魂が本に引っ張られそこから引き剥がすのに痛みを伴っていた。「スバル!」スバルの手から本が落ち、ふらつくスバルをエミリアが支える。スバルは深呼吸を繰り返し落ち着く。
何があったのかエミリアに聞かれ、ベアトリスがスバルの落とした本を拾おうとすると「待てベアトリス!触るな!」と叫ぶ。しかしそれより先に拾い上げてしまう。「テュフォン。スバルは知ってる名前なのかしら?」「あ、ああ…お前こそ」ベアトリスの質問にお前こそ知らないのかと聞き返そうとしようとしたが、彼女の返答がどちらでも答えに詰まりそうだったのでやめた。
人生の追体験
そんな中ベアトリスは本を開き中を確認してしまう。「馬鹿!」「馬鹿とはなんなのよ。別に他の本と変わらないかしら」スバルと同じものがベアトリスには起こらなかった。「スバルには他の本と同じには見えなかった…そういうことと見たのよ」と言う。「まさか部屋の問題と同じでスバルにしかわからない?もしくはやっぱり問題を解いたスバルだけしか効果がないとか…」とエミリアが呟く。
脳裏をよぎるのは恐ろしく濃密に体感した女の記憶だ。臭いがあり、味があり、感触があり、砕いた命に重さを感じた。ああも誰かの記憶を追体験して引き返せたのが奇跡だった。あるいはあのまま他人の人生に呑み込まれる。そんな恐怖があった。そこでテュフォンの事をエミリアに聞かれると「墓所にいたんだよ」「テュフォンは過去にいた魔女の一人だ。傲慢の魔女で見た目はベア子ぐらいの褐色ロリ。ただ、無邪気の残酷って言葉が具現化したみたいな子だった」とスバルが説明する。
エミリアが知らないという事は、魔女博覧会はスバルだけの特別措置だったらしい。「ともあれ、今俺はその本を読んでテュフォンって子の記憶?人生?ルーツか?とにかくそんなところを追体験した」と説明する。ベアトリスが「過去をたぐる手段でもあるかしら。だとすると知りたい事を知れる図書館っていうのはーー」と考えを話している時、ユリウスたちの方から苦痛の声が聞こえていた。「ユリウス?しっかりしぃ!うちの声聞こえる?」とアナスタシアがスバルと同じようになったユリウスに声をかける。
恐らくスバルと同じ体験をしたモノ。背表紙に目を向けると『ーーバルロイ・テメグリフ』するとアナスタシアがヴォラキア帝国の将軍にそんな名前の人がおらんかった?と聞くとユリウスが「正しくは元将軍です」と言う。そして今度はスバルがその本を手に取り、一瞬躊躇って本を開いてみる。しかし、何もこなかった。そしてユリウスは「バルロイ・テメグリフ。ヴォラキア帝国の最強の使い手である九人の将軍『九神将』の一人だった人物です」そして過去形で語るユリウスは既に故人であり命を奪ったのは他でもない私だと言う。
そしてその時は複雑な事情が入り組んだ結果でラインハルトやフェリスとも無縁の話ではないと言う。端的に言えば元将軍は帝国でクーデターを企て、そんな時に帝国に滞在していたと言う。「亡くすのには惜しい人物だった」というユリウスの暗い態度にスバルは「勝ち誇られた方が相手はスッキリする「と話し、「おれとしちゃあお前がそこで負けてくれたら王戦が始まった時タコ殴りにされずに済んだって事実は見逃せない」と言う。するとユリウスはその場合その役割がラインハルトが果たしてくれたさと言うと「俺が消滅する!」とスバルの軽口に沈んだユリウスの表情が微笑を見せる。
ユリウスのバルロイの話はEX4の『最優紀行』にて読むことができます。『王選』が始まる前日譚であり、ヴォラキア帝国へ向かう外交使節団への同行と、その護衛の任でしたが、ヴォラキアで事件に巻き込まれます。
魔獣に育てられた子
そしてこれらの事から、ここにある本は読んだ人間が『見知った相手』の過去を追体験する本ということだった。「俺が魔女でユリウスが元将軍か」と言うとアナスタシアは「なんや聞き逃がせない単語が聞こえた気がするんやけど、ナツキくん魔女とも知り合いなん?いややわぁその交友関係。完全に魔女教やん」「俺も自分で超怖いけどあそこまでキャラ濃くないから。無個性なのが悩みなんだ」と言う。
そこでアナスタシアは「帝国将軍さんとお友達の魔女の本まであるってことは故人の本があるわけや」「ここにある本、過去から今に至るまでの世界中の人間の名前があるんとちゃう?そうやとしたら…目的の誰かの本を探そったらどれだけかかるんやろね?」と言う。
そしてメィリィが「襟巻きのお姉さんの言う通りなら今まで死んじゃった人の本が全部あるんでしょお?その今までってこの塔ができてから全部なのかしらあ?」「わからねぇ。仮にそれで合ってるとしたらざっと四百年分の記録…『死者の書』がそ取ってるってことになる。とても読み切れねえよ」あれからスバルとユリウスが『あたり』を引いて以降、一行は誰も『死者の書』を引けていない。それぐらい四百年の歴史は重いということだ。
そしてスバルはメィリィに「お前いつから殺し屋なんてやってたんだ?」と聞くと今更な質問だと笑い飛ばされる。「この一年でお前は俺の中じゃ人形遊びしてる女の子ってカテゴリーだったんだよ。あんまり俺に限った話じゃないと思うけど」「色々あったけどペトラともずいぶん仲良くしてたじゃん?」「はぁ…あのねぇペトラちゃんはすごおくしたたかだったわよお?」「私が敵か味方かわからないからあ、自分のことを好きになってもいいて。そうしたら裏切れなくなるでしょおって」「おいおい、すげぇなそれ。ペトラ小悪魔すぎだろ」と驚く。
そして「…私がお仕事を始めたのは今から五、六年前よお」と話し出す。「前にも話したけどお、私の場合はお仕事っていうよりママの言いつけに従ってたって感じなのよねえ。逆らうとすごおくすごおく怖い人だったからあ」「ママ、ね」それが言葉通りの母親を指しているわけではないのはわかっている。「元々魔獣ちゃんに言うことを聞いてもらえるって知ってたからあ、そこはあんまり困らなかったのよお。ママもそれが目的でわたしを拾ったんだしい」「ちょっと待て緋色ったって言ったか?それってつまり…」「あぁ、わたし捨て子なのよお。物心付く前に森に放り捨てられて魔獣ちゃんたちに育ててもらってたのよねえ」「私は生まれつき魔獣ちゃんと仲良く出来る力があったからあ…それで助かったみたいねえ」と魔獣に育てられたと衝撃的な話をする。
塔のルール
「まぁ、そもそも捨てられちゃった下人もこの加護のせいだと思うからあ…いいのか悪いのかよくわからないわよねえ。ふふっ」「メィリィ…」「あれ?面白くなかったかしらあ?笑ってくれると思ったんだけどお」スバルは何を言えばよいかわからない顔になっていた。「生まれつきの加護って苦労が多いのよお。内政官さんとかあ、牙のお兄さんもそうだからあ…きっとわかってくれると思うわあ」と言う。
そしてスバルは「この中に仮にお前の親の本があったら…読んでみたいか?」「全然興味ないけどお?」それは素直な答えだった。「誤解しないでねえ。私親に捨てられたことを恨んだりなんてしてないのよお?なんていうかそういう対象じゃないのよねえ」と親は興味の対象外だと語る。
「思ったんだけどお、ここって死んじゃった人の本が増えてく仕組みよねえ?」「それってどんな感じで増えてくのかしらあ。今個々でお兄さんがいきなり死んじゃったらお人さんの本が急にストンって出てくるのお?それは興味あるわあ」と言う。そこにエミリアが来る。
メィリィとの対話を終え、スバル達は方針転換を余儀なくされていた。今の所手がかりゼロだった事に『死者の書』の活用ではなく、次なる試験。二層への挑戦の優先だった。『死者の書』はスバル達の求める情報の入手元として適しているとは到底言い難い。だから多分ほしい情報は上の階にあるはずだと探すも上に続く階段が見つからなかった。
そこにユリウスが声をかけてきて「ほんの並びにも法則性は見いだせなかった。名前や年代別に並んでいるわけではないらしい」と言う。そしてユリウスは「一案として国を挙げるという考えができる」と話す。人海戦術が使えるなら書庫の事を王国へ報告する価値はある。それからシャウラに二層へ行く階段について聞くも、四層から上に行ったことはないと話す。
さらにアナスタシアが予想をし「塔を守るための決まり事、五個と違う?」と言うとシャウラが「うげっ」と反応を見せ、疑いが真実だと示す。そしてそれを聞くと「例えばお師様たちがあーしに内緒で塔を出ていこうとかしたら、あーしはもう容赦なくぶっ殺すッス」と言う。すげえいきなりだなとスバルが言うと「別にやりたくてやるわけじゃないッス!そもそもこれはあーしにとって、逆らえない問題なんスよぉ」と言う。それに対しスバルは契約とか言い出さないだろうなと言い「お前もベア子みたいに精霊なんじゃない?」と聞く。
二層への階段
しかしシャウラは「ならけないじゃないッスか。そんなフワフワした連中と一緒にされちゃたまったもんじゃないッス…なんか急にみんな目が怖いッス」と言う。「この面子、八割が精霊と関係あるからな!」とスバルが言う。そしてシャウラが話し出す。「まず、大図書館プレイアデスの挑戦者はもう絶対に外に出さないッス」「ただし、ちゃんと大図書館の試験を解き終えて、一層のマイアまでいけば問題ないッス」「ちなみにこの条件に違反した場合、あーしは血も涙もないキリングマシーンに早変わりするッス」と言う。
そしてまとめて試験のルールを話す。「一、試験を終えずに猿ことを禁ず。二、試験の決まりに反することを禁ず。三、書庫への不敬は禁ず。四、塔そのものへの破壊行為を禁ず。五…あー五は…あー、ないッス」と言う。そしてこの中で気になったのが二の『試験の決まりに反することを禁ず』だった。これは決め事の内容がわからず、エキドナだったらそういうことしそうじゃない?とエミリアが言う。
そしてこの判定についてはシャウラによればどの条件が破られてもわかるらしく誤魔化せないとか。話が一段落した所で「よしいけ、メィリィ!シャウラの手綱をしっかり握っといてくれ」とスバルが言う。一瞬反発するもよじよじとメィリィはシャウラの背中に登る。「波長が合ったって感じかしらあ?なんだかこの裸のお姉さんの傍にいると、すごおく気持ちが落ち着くのよねえ」と言う。
「あーしもまぁ、別に気にしないッス。ちびっ子二号の面倒ぐらい見るッス」「二号がこっちのちびっ子で、一号があっちのちびっ子ッス」とメィリィとベアトリスの事を言う。そして次に二層の階段の所在を探すことになるが、エミリアが思いつく。そしてエミリアの勘が当たる。それは、三層の部屋の中になかったら、別の場所、今までちゃんと見て回ってなかった四層とか五層に出てくるかもという考えだった。
そして二層への階段は四層のラムやレムのいる緑部屋のすぐ隣の空っぽだった部屋の中に出現していた。二層への階段は大階段とも呼ぶべき階段で横幅も段差の高さもスケールアップしていた。そして二層の試験についてスバルは「俺の知らない知識だったら一発アウト。フリューゲルだし、ドイツの歴史とか言われたらもうどうにもならねぇよ」と言う。ちなみにフリューゲルとはドイツ語で『翼』だったはずだ。関係あるかどうかわからないが、仮にフリューゲルがドイツ人ならお手上げだと考える。
棒振り
そして一行は二層へ辿り着く。するとそこは三層と同じ真っ白い空間だった。しかし、部屋の中心には三層のモノリスとは違う『剣』が突き立っていた。触れれば恐らく試験が始まる。ユリウスがそれを見て「雰囲気からして『選定の剣』ってとこか…」と呟く。
そして一行は剣の前に立ちスバルは剣の柄に手を伸ばす。『ーー天剣にいたりし愚者、彼の者の許しを得よ』と脳に直接声が響く。その内容はみんなにも聞こえたのか何かに反応していた。しかしみんなが凝視していたのはスバルの向こう側だった。すると剣があった地面の先に一つの影が出現していた。
赤い長髪を無造作に背に流した男。身長はかなり高く、紅の着流しを右腕の裾を抜いた裸身。胴回りには白いさらしが巻かれ、左目には珍妙な紋様の眼帯。この世で最も美しい凶獣ーそんな存在にスバルは感じた。「天剣にいたりし愚者、彼の者の…ゆる、しを…」繰り返される男の声に変化が生じ、それと同じタイミングでシャウラが「ひやぁぁぁぁ!お師様助けてぇ!」と叫びスバルに飛びつく。そしてそのまま白目を剥いて失神してしまう。
シャウラが失神してしまうほどの相手。そこでユリウスは「只者ではないとそうお見受けする」と言う。すると「あぁン?」「なんだ、オメエ。つーかここどこだふざけてンのか、オメエ」と苛立ちを含んだ返答。そしてスバルが「いきなり現れて…ずいぶん偉そうだなお前」と声を絞り出す。「なンだオメエ。良いご身分かよ。エロい女侍らせて肉布団ってか、オメエそこ代われ」「生憎当人の意思を尊重してそのお願いは却下だ」と会話する。
そんな中エミリアが「天剣にいたりし愚者、彼の者の許しを得よ」と呟く。すると男は「かっ!そっちのいい女は稚魚とは違ぇな。生身だったら今夜の相手だ、オメエ。…よく見たらやべえなオメエ!その面マブすぎんだろオメエ!」しかしそこにスバルが割って入り試験官なのかと聞く。すると「まともに話したけりゃこっからオレを一歩でも動かしてみろや」と言う。目の前に立つ男が『天剣にいたりし愚者』なら許しを得る方法は教わった。
そこでユリウスが「ルグニカ王国、近衛騎士団所属。ユリウス・ユークリウス」と名乗る。すると「名乗る名なンざねえよ。オレはただの『棒振り』だ」と言う。大図書館プレイアデス。第二層『エレクトラ』の試験。制限時間『条件付無制限』、挑戦回数『条件付無制限』、挑戦者『条件付無制限』。試験開始。
武器は箸
そしてユリウスが踏み込み、男に二層の床に突き立っていた選定の剣を男の足下に突き刺す。「オレに剣投げ渡すなンざ死にてえのか」と言う。剣を蹴りつけ素手じゃないという男にユリウスはそのまま剣を振り下ろす。しかし男は恐るべき正確さでユリウスの剣を摘んでいた。
「…木の枝?」「違えよ、箸だ。ツマミ喰うのにいいンだろうが。だから持ち歩いてンだよ」黒く細長い木の棒は紛れもなく箸だった。「笑わせンなオメエ。一番いい角度に一番いい速さで一番いい感じに一番うまく振り回せば、箸だろうと斬れねえもンなンかねえよ」と言う。そのまま男はユリウスの腰を蹴りつけ弾き飛ばす。
弾き飛ばしたユリウスに向かって弾丸のような速度で跳躍しありえない身体能力で真上を取って箸で打ち下ろす。それをユリウスは騎士剣で弾くも男はそれを掻い潜り突き刺す。そこに「ジワルドー!!」と熱線が飛ぶ。射線上にあるものを焼き尽くす熱波の刃。直線的で避けられやすいように見えるが、熱線は光のような速度で強引に獲物へとまっすぐ襲いかかる。「ーーオレの剣は光も斬るぜ、オメエ」と男は放たれる熱線を正面から切り裂く。
さらに「ジワルドぉぉぉー!!」と詠唱が重なる。両手を広げ魔法を行使したのはアナスタシア。その五指、両手合わせて10本の指から熱線を同時に放つ。しかし男は箸で光を振り払い、直後宙を蹴って急降下しユリウスを箸に引っ掛けて地面に擦りつけるように走る。「ジワルド!ジワルド!ジワルドぉーー!」と疾走する男目掛けて熱線を連発する。しかし時間切れが起こる。
アナスタシアはその場に崩れ落ち鼻血が流れる。スバルは思い出す。切り札は身を削ると襟ドナが話していた事を。ユリウスは倒れた主の姿に奮起する。マントを外し一瞬の隙から足を回しブレイクダンスのような動きで大きく飛びずさる。そしてユリウスが騎士剣で連撃を放つ。しかし「オメエ本気出せや。本気でやってこれなら…とんだ期待はずれだぜ」と言われ、斬撃が弾かれる。
「女のとこいきたきゃいかせてやんよ。やわけえ膝でも借りて泣いて甘えろ。出来損ないの不細工剣士が」それを聞いてユリウスは騎士剣を振る。しかしそれは誰が見ても迷いのある剣撃だった。男は騎士剣を真っ二つにし「寝ろ」と呟くと拳骨をユリウスの横っ面に突きつける。一瞬でアナスタシアの横まで吹っ飛び意識のない主従が並ぶ。「さって、次は…」と男はこちらを振り返る。あっという間の出来事に棒立ちだった一行だが「アイスブランド・アーツ、アイシクルライン!」とエミリアが声を上げる。
エミリアの無頓着
エミリアは、氷結結界を作り出しその中心にいる男に声をかける。「あなたを一歩でも動かせばいいんじゃないの?すごーく走り回ってたけど」「真に受けんなよ。ノリで言っただけだぜ。たまにあンだろ、特に意味もねえけどカッコいいこと言っちまう時が」「あなたはすごーく強そう。だけど私達は試験を乗り越えなきゃいけないの。だから勝てる方法を用意して」「一歩でもあなたが動かせたら私達の勝ち。それで勝負しましょう…ダメ?」と交渉する。
「かっ!いいな、嫌いじゃねぇぞ、オメエ。オレ相手によくぞそンだけ言った。トリーシャ以来の大馬鹿だぜ。オメエ気に入った」そしてこれから一歩でも動いたら負けという男の条件で試験が始まることとなった。二人が倒れている中、次はエミリアが挑戦する。そして青白い光のフィールドに大気のひび割れる音がして次々と氷の武器が形成される。エミリアの膨大な魔力を使った絶対破壊空間、スバルの考案した絶技。
そして一斉に氷の武器が男に襲いかかる。しかし男は箸で武器を粉砕し、一歩も動かない。膠着状態を打破しようとエミリアは斧を持って突っ込む。しかし箸で軌道を変えられ地面に突き刺さる。エミリアはそこで攻撃をやめず、後方から迫る矛を奪うように手にとって連撃を加える。さらに双剣を手に持ち左右から挟み込むように斬撃。しかし男はそれを背中から倒れ込むように回避し足首の力だけで体を支えた。
空振りし隙を見せたエミリアに男は前傾し箸を使ってエミリアの胸を撫でる。「約得、約得。これしきのことで怒んじゃ…」「とりゃ!」「ごぁっーー!?」頭上で手を組んだエミリアはその手を氷のグローブで覆い下品に笑った男の頭頂部を直撃する。その威力に男は悲鳴を上げて頭を抱えてその場をゴロゴロと転がった。「痛ぇぇぇ!な、何考えてんだオメエ!?普通あんな真似されたら女は動き鈍んだろうが!一瞬も躊躇わなかったぞオメエ!」「ーー?体に触られただけでしょう?あなた隙だらけだったもの」「ざっけンな!どういう育ち方してンだ!親は何してやがったンだ!」と叫ぶ。
男がした変態行為にスバルは強者への恐れも忘れて激昂する。それを宥めるようにベアトリスは男の足を見るのよと言い見ると、男は一歩どころじゃなく動いていた。結果、男は潔く負けを認めた。しかし「で、次は稚魚がやんのか?それとも砂利二人のどっちかかよ」「塔にいんのが全部で七人…抜けたのがオメエの女がまず一人」「次は誰がオレを抜いてくれんだ。なぁオメエよ」達成者エミリア。未達成者、スバル、ベアトリス、ユリウス、アナスタシア、メィリィ、ラム。ーー『試験』続行。
撤退
スバルは一人でもクリアすればいいって条件じゃなかったかと聞くも、勝手抜かすなと言われる。そこでベアトリスは「エミリアはお前に一歩でも動いたら『私たち』の勝ちと言ったのよ。つまりエミリアの勝利はベティー達全員の勝利かしら!」と言う。しかし男は「そりゃ言い方の問題だろうよ、オメエ。ならねえよ」と言われてしまう。
さらに男は「まぁ、そのジャリの言い分もわからなくはねえよ。最初はどうも何人掛かりでもいいんで俺を抜いてみろって話だったみてえだしよ。言いなりになんのはつまんねえから無理くり起きてやったけどな」と言う。「無理くり起きたって…最初のあれはシステム破りってことか!?」「知らねえよ。オレにわかる言葉使えよ。若白髪みてえなことばっか言ってんじゃねえぞ」この発言にスバルは理解した。
「本当は全員で協力して条件を満たせばいいだけの試験がお前が起きたのが理由で一人ずつ条件を満たさなきゃいけなくなった?」「かっ!けどな総掛かりで俺を殺すのと俺に胸揉ませて殴んのとどっちが楽だったかわかりゃしね…っと!」スバルは男のセクハラ発言に鞭を最速で取り出し叩きつけていた。それも箸で摘まれてしまったが。そんなやりとりの中、メィリィが引き返すべきだと思うと提案する。
「なんでお兄さんがその人と普通に話せるのかがわからないわあ。騎士のお兄さんも襟巻きのお姉さんもやられて裸のお姉さんだって」メィリィの弱気な意見は現状戦力を見れば当然の判断だった。そしてスバルは引き下がって出直しとなったら認めてくれるのか聞く。すると「ーーやめだ」「やーめーだ!萎えた!」「店仕舞だ。帰れオメエら。オレは飽きた。やってやらん」と男が言う。スバルはそれに意見すると「やる気がねえ時のオレは遊ばねえぞ。オメエやれんのか?」とどす黒く血生臭い殺意を纏った凶獣の微笑みを浮かべた。
そんな時エミリアの膝が落ち床へへたり込む。呼吸を忘れてしまっていたことにもこの瞬間に気付いたとばかりに。それはスバルも同じだった。喉に手を当てて必死に酸素を取り込む。眼力だけで窒息死しそうだった。「せいぜい頭ひねって勝ち筋探せよ。激マブと同じ手は通用しねえぞ。オレは寝る」そう言い残しいびきをかいて寝てしまう。そして一行は負傷者を連れて撤退を余儀なくされた。四層へ戻り、緑部屋にいたラムと別室で合流し二層の報告をした。ユリウスとアナスタシアは緑部屋で治療することに。
レイド・アストレア
最高戦力のエミリアがハードルを下げて下げてやっとクリアできたのが実例。そしてユリウスを心配する。剣技は届かず弄ばれ、挙げ句に騎士剣までも折られた。それにアナスタシアのあの必死さが気になった。中身が襟ドナでありこれまでアナスタシアとしての振る舞いを忘れず彼女の肉体に配慮するとした約束を守り続けていたはずがここにきて突然あんな行動に出たのは何故か。
そしてラムは試験官の棒振りの事をもっと突き詰めるべきと話す。スバルが思い当たる人間はいないか聞き、ラインハルト級かもしれないと話す。そしてラムが「ラインハルトと同格の敵…地上最強と並び立つなんて言われてるのは今の世界じゃ各国一人ずつよ」「ヴォラキア帝国一将『青き雷光』セシルス・セグムント、グステコ聖王国の『狂王子』、カララギ都市国家の『礼賛者』ハリベル、でもどれも特徴が違うわね」と言う。
そんな中、シャウラがメィリィの膝枕に頭を乗せたまま起きようとしていた。そして聞くと気絶した事は覚えていなかった。そこでラムが思い出しなさいと記憶を辿らせる。すると「な、な、なんであいつがここにいるッスか!お師様たちが死んだって言ってくれてたのに!生きてたッス!やっぱり殺しても死なない奴だったッス!」と言う。シャウラが何を言い出したのか問い返そうとすると、そこでスバルは気付く。
この塔にきてから該当する人物は一人だけだ。「『棒振り』!『棒振り』レイドッス!あの鬼畜!悪魔!またあーしの胸ズバズバ揉む為に生きて帰ってきたんスよーっ!!」レイド・アストレア。それは伝説に名を残した剣士の名前。魔獣を斬り、剣豪を斬り、龍を斬り、ついには魔女を切ったとされる大剣士。『剣聖』の名を最初に賜った人物であり、世界を救った三英傑の一人でもある。ここが数百年前から存在し、魔女に所縁のあるものの手で作られた塔でなければ信じられなかった。
そしてその事実を収穫に緑部屋へと戻った。相手がレイド・アストレアと知ればその対策を練らなければならない。幸いにしてその剣聖は逸話に事欠かない男と聞く。そしてこれまた幸いなのが過去の偉人について詳しい人材が一行には含まれていた。しかし緑部屋に戻ったスバルが見たのは4つのベッドにはそれぞれレムとアナスタシアとパトラッシュがいて、一つが空になっていた。
階段を叩く靴音と肌を刺す剣気に男はゆっくりと瞳を開けた。その剣気には覚えがあった。ただ、それは相手も同じ事だったから奇妙に思った。もう少し賢い相手かと思ったから。「今度は遊びじゃ済まさねえぞオメエ」そして躊躇いなく剣を抜き取り「ルグニカ王国近衛騎士団所属ユリウス・ユークリウス」名乗りを上げて猛然と走り出した。
ユリウス・ユークリウス
おそらく、誰も信じたりしないだろう。『俺の名はナツキ・スバル!ロズワール邸の下男にして、こちらにおわす王候補、エミリア様の一の騎士!』あの瞬間、王城の大広間にいた全員を敵に回した大法螺吹き。言い切った当人さえも浮ついた感情と勢い任せでさることを隠しきれずにいた発言。ーーそれにただ一人、感銘を受けた男がいたことなど。
拾い上げた選定の剣は何故か泣きたくなるほどに掌に馴染んだ。あらゆる事態を想定し可能な限り剣を選ばず戦えるように修練を積んできた自負があった。「つまんねえな、オメエ」その自負を乗せた鋭い刺突を男は欠伸混じりに後ろに飛んで軽々かわした。跳躍に追いつき着地地点へ向けて剣撃を叩き込む。しかしレイドは棒切れで安々といなす。
その隙にレイドは蹴りを入れ10mほど吹っ飛ばされるもすぐに距離を詰める。箸と肘の攻撃でユリウスは意識が持っていかれかける。レイドはユリウスに「全然足りねえ。人生サボってんじゃねえよ」と言われ顔面を蹴られる。「天剣に至る資格なし。オメエにゃ子分の立場もやれねぇよ」と言い腰を落とす。ユリウスが蹴飛ばされる直前スバルがユリウスの名前を呼んでいた。そしてユリウスに駆け寄る。
「遅かったな。もう片付いちまったし、邪魔臭えからとっとと持って帰れ」「…レイド・アストレア」「んだよオメエ
人の名前に探りなんぞいれてんじゃねえぞ。名乗らねえ方がカッコいいってオレのカッコつけの邪魔してくれてんじゃねえよ」そうしてスバルはユリウスを担いで階段を降りる。
そして途中で意識を失っていたユリウスが目を覚ます。そしてユリウスは相手がレイドだと知っていた。『棒振り』という呼ばれ方は文献に見られた彼を示す表現だとか。そして『棒振り』とは得物を選ばないという意味合いという。そしてスバルは金貨に掘られている初代剣聖は、これもシャウラ同様に実物と大違いでもっとオッサンみたいだと話す。
しかしユリウスはレイドが三英傑に数えられる功績を上げたのはもっと上の年齢で金貨の姿は正しく、上にいる彼が史実より若いと話す。するとスバルは「そういえば、レイドはシャウラに見覚えがなかったみたいだったな…」と疑問が浮かぶ。それなら魔女と戦ったのは全盛期過ぎてからだと考え、突破しなければならないのは若い全盛期だと思う。
ユリウスの意地
そしてスバルはユリウスが倒れた後にエミリアが試練を突破した事を話す。しかし色んな偶然が味方したと言う。さらにレイドがクリアした本人だけが通るのを許すと話し全員が上に行くには全員が勝たなくてはいけないと話す。だから作戦を練る必要があると言うもユリウスはどこか応答が遅く不審に思う。
そしてユリウスはエミリア様が試験を越えた事については柔軟に受け入れ、そろそろ下ろしてもらえるかと言う。しかしスバルはありがたく背負われておけと言う。それにもユリウスは頑固に階段くらいは下りられる。アナスタシア様にこんな姿は見せられないと言う。スバルはそれでも背負ったままにしようとするとユリウスが突然「下ろしてくれと言っているだろう!」と叫ぶ。
そして急にスバルの背中をよじ登ったことで、スバルはとっさに階段の壁の方にぶつかっていた。そして気付くとユリウスがいくらか階段を滑り落ちていた。「お前…馬鹿野郎!いったい何考えてやがんだ!言わんこっちゃねぇ!おい、そこにいろ今行く」「こなくていい!」「一人で立てる。手を借りる必要はない」そうしてユリウスは、スバルを静止し、ゆっくり腰を上げて寄りかかりながら立ち上がった。
そしてユリウスは女性達が心配だからと先に説明してきてくれないだろうかとスバルにお願いする。こちらに顔を向けずに下りるユリウスは話し続ける。スバルは「エミリア達に先に話してくればいいんだな」とユリウスに追いつく。先に行ってくれと促したユリウスの内心をスバルは少し理解できているつもりだった。それはエミリア達と違い、スバルが真っ直ぐにユリウスがレイドへ挑みにいったとわかったのと同じ理由。
いつかスバルが抱いたものとどこか似通ったものが原因に違いない。だからあの時、スバルはーー「ああ、クソ!クソクソクソ!馬鹿野郎!俺もお前も大馬鹿野郎だ!」とユリウスの左腕を掴むと「な…スバル、何のつもり…」「うるせぇ!何が一人で立てるだ!へっぴり腰なのが丸見え何だよ!そんな奴を置いてささっといけなんて飲めるわけねぇだろ!エミリアに叱られる以前に俺が俺に嫌気が差すっつーんだよ!」「だが、私は…」
独りきりにはさせない
「俺だって、本当に手貸さなくていいんなら手なんか貸さねぇよ。ただでさえ俺の両手はあれこれ色んなもんで埋まってんだ。お前が本気で嫌なら俺が我慢できなくなるように情けねぇ格好でふらふら歩いてんじゃねぇ!」そう怒鳴るとユリウスは押し黙った。一度は振りほどこうとした腕は力を失い、ユリウスが抵抗を躊躇ったのを見た途端にスバルは無理やりに肩を貸したまま歩き始める。
「お前の腹の底がわかってるなんて知ったような口は聞かねぇよ」「けど、今お前は一人でこの階段を独りっきりで歩いて下りる必要なんかねぇんだ。肩ぐらい貸してやるし、貸しだと思わない」それを言い出せばスバルはユリウスにどれだけ借りがあるのか。それこそ一番最初の借りはあの王城の練兵場から始まって。ユリウスがレイドに勝てないとわかっていながら挑みかかった理由はわかる。あの時のスバルと同じだ。あの時のスバルは勝てないとわかっていてもユリウスに挑みかかった。何度倒されても懲りずに立ち上がり、挑み続けた。それ以外に込み上げる激情を吐き出す方法がなかったから。
そしてあの時スバルは何もかもが終わったあの場所でエミリアとの口論の末に決別した場所で独りきりになって辛かった。泣きたかった。ーーだからユリウスをこの階段に独りきりにしてやるものか。あの時と違ってこの激情をどこへ吐き出せばいいかわからぬまま「ーースバル」「なんだ」「…すまない」「うるせぇ」それが八つ当たりに聞こえなければいいと思いながら答えた。そのまま二人はゆっくりと階段を下りて四層へ戻っていった。
そして、エミリアが二人を見つけ「傷が治るまで休んでること!絶対の絶対!」とユリウスに言い緑部屋に叩き込んだ。エミリアの有無を言わせないやり方はありがたかった。理由も聞かず言い訳もさせない早業だった。「しなきゃいけない話はきっとスバルがしてくれははずだもの。だから今はしっかり休んでもらってそれ以外のお話は後回しでいいの。でしょう?」と草のベッドに腰を下ろしたユリウスに「だってよ」とスバルは肩をすくめた。
そして人数制限のあるので緑部屋にはパトラッシュをユリウスを任せることに。「大人しく傷の治療に専念させてもらうとするよ。こうして乙女たちに囲まれ悠々と静養するのも贅沢なことだからね」
何百年でも見守る
「言っとくが、今この部屋にいる女子はアナスタシアさん以外は全員俺のだ」「私、まだスバルのものになってません。…思ったんだけど私の騎士様なんだから、スバルが私のものなんじゃないの?」「それすげぇ嬉し恥ずかしい評価なんだけど!」と話した後、スバルとエミリアは緑部屋を出る。
そして「ひとまず俺達の話し合いは…」「騎士ユリウスの傷が癒えるまでにその第二の試験とやらの突破の方法を見つけ出さなくちゃいけない、でしょう?」と通路で待たされていたラムが割り込む。そして四層の小部屋に入ると「遅いかしら。またせ過ぎなのよ。ユリウスは平気そうかしら?」とベアトリスが声をかける。「安心しろ。峠は越したっぽい。責任感が無駄に強い奴だからあれこれと思い悩みするだろうけど、もう自棄は起こさねえよ」とスバルが話す。
そしてみんなにも手伝ってもらっていたユリウス探しにお疲れ様だと話し、とりあえず無事だと言う。改めてシャウラにレイドの事を聞く。弱点はないようで試験の事は、知らないわけじゃないようだが、今はまだ語るべき時じゃないと話す。シャウラはゆっくりやってったらいいじゃないッスかと言い「いくらでも時間をかけて試験を順当にクリアしてくれてったらいいッス。あーしはそれをずーっと見守ってるッス。何日、何年、何百年でも」と言う。軽はずみに冗談と笑い飛ばせない言葉だった。
結局のところ、二層エレクトラの攻略会議の結論は先送りにされた。具体的な打開策が出なかったこともあるが、スバルの腹の虫が鳴ったのが原因だった。塔の攻略に目を向ければあらゆる点から不安が出てくる。既にスバル達はこの旅に1ヶ月以上も費やしている。トントン拍子で塔の攻略を終えてもプリステラへの帰還に同じだけの時間をかけると考えれば最低でも三ヶ月近い長旅となる。エミリアやアナスタシアが参加する王戦には期限がある。全体で三年、既に一年と少しが経過し、残す期限は2年を切っている。
スバルがベアトリスと食事の準備が整うまで四層を回っていたが、バケツを持ったエミリアと出くわす。バケツの中には水があり、それはなんと緑部屋の精霊が綺麗な水を出してくれたとか。本当なら魔法でも水を出せるがこの周辺は瘴気の影響が濃すぎるからその瘴気に長く触れたマナを飲み水に使うのは避けたほうが懸命とのこと。
ラムの料理仕事
水を確保できていても食料の問題がある。砂丘に入る前の町で準備した食料はせいぜい一ヶ月分だった。そして食事の為に拠点に再集合した一同。その場には一応意識がないレムとアナスタシアを除いた全員が揃い、顔を合わせている。つまりーー「食事の前に一言だけよろしいでしょうか。エミリア様」そう言ったのはユリウスだ。
「もちろんどうぞ。でも別に私に断る必要なんてなかったのに」「アナスタシア様が不在の今、この場で最も尊ばれるべき方はエミリア様です。それに既に私の勝手でご迷惑をおかけしたあと。この期に及んでとは参りません」「殊勝な心掛けね、そのぐらい前からわかっていてほしかったけど」そこにラムが割り込む。
「無謀で意地っ張りなのはバルスだけで十分よ。特にまともだと当てにしていた相手に先走られては失望して当然でしょう。今後はないと思わせてほしいわね」「ラム、今のは言いすぎよ」「…申し訳ありませんエミリア様。以後気をつけます」「ラム女史にも他の方々にも大変なご迷惑をおかけしました」ユリウスがしたかったのはこのケジメだ。
そして「はい!ユリウスは謝りました!私はその謝ってくれた気持ちを受け入れます、それでこのことで何が悪いってお話は私の中でおしまい」そうしてそれぞれがそれに理解を示すが、ラムだけは許すとも許さぬとも何も言わなかった。そして今回の食事はラムとエミリアが担当した。ちなみに旅のメンバーでまともな料理ができたのは一年間の使用人生活で料理スキルを身に着けたスバルと何をやらせてもそつなくこなすユリウス、そして意外なことにまともな料理もやれば作れるラムの3人だった。
「一ヶ月も旅しててあれだがいまだにラムが料理できるの慣れねぇなと」「屋敷でラムが厨房に立たないのはできないからじゃなくてやらないだけよ。蒸かし芋ならいざ知らず普通の料理仕事はフレデリカとペトラに譲ってあげるわ」「そか、…まぁそうだな」「ええ、そうよ…なんで蒸かし芋だけは特別なのかしら」自分の発言に疑問を抱いた風にラムが難しい顔をする。
あらゆる家事でラムはレムに遅れを取っていた。だがレムの記憶が世界から剥がされたのを切っ掛けにスバルはその関係性が額面通りの意味ではなかったことを悟っている。事実、ラムはメイド仕事にとどまらず何をやらせてもうまくやるはず。つまりレムが健在だった頃からやろうと思えば今と同じようにやれていた。
緑部屋の異変
そうしてこなかったのは、彼女の生来の怠け癖が原因…ではない。その事をあえて掘り起こしたいとはスバルは思わなかった。「それにしてもお前の想像ついてたけど、お前の食い方品が欠片もないな」とシャウラに目をやる。「裸のお姉さんってばあ、すごい食べっぷりよねえ。そんなにお腹が空いてたのお?」「減ったってよりこれがうますぎるッス!あーしあんまし食に執着ないと思ってたッスけどこの味のためなら半魔に弟子入りすんのもいとわねッス!」「え?弟子入りって私に?料理の?」とシャウラはエミリアへ頷く。
今日の料理も大体7割ぐらいはラムの手柄だろうに、料理の極意を知った風にエミリアは自慢げにシャウラに語る。食糧事情は悩みどころだったが、このペースで食われるともっと短いかも知れねえとスバルは思う。食事が終わると湧き水を使った水浴びをしてこの日は解散、就寝時間に。ベアトリスとエミリアを竜車に見送り、スバルは緑部屋に行く。
すると部屋の前でユリウスと鉢合わせする。同じ目的で来たこと察してこの場はユリウスがスバルに譲り、竜車へ戻ることに。少し疲れたと試験の事を遠回しに言ったユリウスは、回復したのか強がりなのか分かりづらい。分かりづらかったが「ユリウス、やっぱりお前はアナスタシアさんが起きるのを待った方がいい。俺の方の用事が済んだら起こすからそうしろ」「言っとくが後悔した回数は俺のほうがきっとお前より多いぜ、その俺からのアドバイスだ。ちょっとは真に受けてくれや」と言いスバルは緑部屋に入る。
ーースバルが異変に気付いたのは軽く肩を揺すられる感覚が切っ掛けだった。「寝てた、のか?」緑部屋でレムの寝顔と話している内にいつの間にか寝てしまっていたらしい。何を理由にスバルを起こしたのかと起こしてくれたパトラッシュの方を振り返ると、その理由はひと目でわかった。室内にある二つの寝台。その片方のアナスタシアの寝ていた方が空になっている。「あれだけユリウスに偉そうなこと言っておいて…」居眠りした挙げ句にアナスタシアがいなくなるのに気付けなかった。
しかし問題はそれだけではない。「起きて、それで…どこにいった?トイレか?俺も起こさないで」スバルに何も言わず勝手に緑部屋を出ていったと思われる状況が良くない。「まだベッドがほんのりあったかい。…探さねえと」探さなければと階下へ他の面子を呼びにいこうとしたスバルはそこで息を詰めた。
白い鳥の行方
「ーーは?」それはあってはならないものを見た時の呆け声だった。スバルの視界を何かが悠然と横切っていく。それは白い翼を広げさほど広いとはいえない通路を華麗に飛んでいく一羽の鳥だった。「なんで…塔内に鳥が?」プレアデス監視塔の壁面に外と通じる窓のようなものは全くない。塔は完全に外界と隔絶された建物であり、内と外をつなげるのは五層にあった大扉だけだ。
スバルは慌てて鳥を追い始める。それを懸命に追うが「消えた!?」通路の最奥へ辿り着いた所で驚く。ぐるりと円を描く形になっている四層の通路。だがそれは一周できるように繋がってはおらず半周ほどのところで壁に阻まれてしまう。時計で言えば、12時と6時の所に壁があり左右のどちらからでもそこで足を止められる。
通路に落ちていた白い羽を拾いスバルは鳥が実在した証拠を獲得。持ち帰ってエミリア達に鳥の実在を訴えることもできるが、何の解決にもならない。消えたアナスタシアの手がかりには何もーー「いや、待て。ここに羽が落ちてるってことは何かあるはず」そう考えスバルは周辺の床や壁を手当り次第に調べる。しかしどこにも仕掛けのようなものはなく、時間だけが過ぎる。やはり人を呼んできた方がーーと思った時、羽の落ちていた地点を手のひらでさらっていた所だった。
指がすぐ傍にあった壁を掠めたと思った瞬間にすっとその壁を素通りする。「でもここの壁は調べたはず…」スバルが改めて壁に触れればその壁はスバルの腰から上には実体があり、それより低い地点にはまやかしが張られていた。入口を塞いだように見える幻惑。以前、ペテルギウス率いる魔女教が岩窟に作った隠れ家にこうした仕掛けがあったことを思い出す。這いつくばり四肢を付けば、まやかしの壁をくぐることができる。
スバルはその壁を潜り向こう側へと挑んだ。鳥は低空飛行でここを抜けてこの先へ行ったのだ。抜けた先で顔に外気が冷たい風が触れた事に気付く。そこに広がっていたのは、想像を絶するほど高い場所から覗ける夜の砂丘の光景。それを見下ろしている星がきらめく黒い空。そして、バルコニーと呼ぶべき空間で風に紫色の髪をたなびかせるアナスタシアと彼女の周りを囲む無数の鳥たちが待つ光景だった。
秘密のバルコニー
「ーーナツキくん?」と探し人がこちらを振り返る。「…夜の散歩にはうってつけの絶景スポットだな」「見晴らしがええのはホントやね。でもせっかくの見晴らしも肝心の景色が真っ黒やなんて残念やわぁ」「これはこれで悪くないけどな。それに空気が冷たくて澄んでるから星が超よく見える、ロマンティックだろ?」「星が綺麗なんは事実やね。砂漠に溜まってた瘴気より高くなってるんかな。今まで見えなかった星が見えるみたいや」
そして「で、この状況の言い訳は?」「深夜こっそり抜け出して誰も知らない通路を抜けてこんな所で夜風に当たりながら鳥達と戯れる…怪しすぎるだろ」この場には二人以外にもバルコニーに多くの観衆が詰めかけている。それが微動だにせず静かに見守り続ける作り物のような鳥たちだった。
バルコニーの外縁で羽を休める鳥、その数は50を下らない。群れほどいるがそれは群れと呼ぶのに抵抗があるのは、集まった鳥の種類が統一されていないためだ。白い鳥が、黒い鳥が、斑の鳥が、大きい鳥が、統一感のない鳥たちが集まっている。これだけ多くの鳥がいるのに鳴き声どころか羽音ひとつ聞こえてこない。
「ナツキくんがそないに不安に思うんも仕方ないけど…秘密の通路は大げさやない?現にナツキくんもこられたやん?」「それは鳥が俺を導いたというか、あれだよ」「それやったらうちもおんなじ。夜、塔をふらっと散歩しててん。そしたら鳥が飛んどるやないの、それなにかなーって追いかけたらここに」当然だが納得のいく説明ではない。そんな都合のいい話があってなるものかと思う。
「この鳥は…」「この子たち、なんなんやろね」「ーっ。それは俺が聞きたいことだよ」「こいつら砂時間を越えようとした時に飛んでた鳥なのかな」「ラムさんが視界を借りた子ぉらやね。あの魔獣の花畑と遭遇した後、どうなったかわからんかったけど、ちゃんと到着しとったようやね」アナスタシアがなでていた鳥の喉を指でくすぐる。そうされても鳥からの反応はなかった。
襟ドナの真意
「この子らはずっとこの調子。うちも途方に暮れてたところ」「それを信じるのは俺の経験則的にちょっと無理だな」「俺の経験上、迂闊にこんな場面に出くわすと大抵は命が危ないのがお約束だ」スバルの臨死経験はなかなか豊富だ。それは屋敷の夜徘徊でレムに撲殺されたところから始まる。
「安心しぃ。そんなおっかないこと考えてへんし、うちにナツキくんへの敵意はない。この塔の他の誰にも…あ、試験官らは別やけど」「シャウラとレイドか」名前を出した途端苦い顔でアナスタシアが押し黙る。「寝てたから聞いてなかったよな?二層の試験官…あいつはレイド・アストレアだ、初代剣聖、どうも過去から呼ばれて出てきた、みたいな仕組みらしい」「とんでも設計やね、この塔。創造主は何を考えていたのやら」カララギ弁が抜けた気配にスバルは息を詰める。
「今ここにいるのは俺とお前の二人だけなんだ、腹割って話さないか」「正直人のガワかぶったお前と話してても埒が明かない。何を言われても俺がお前を根っこから信用するのは無理だ。だから…」「ーーアナを演じるボクではなく、ボクと言葉を交わしたいと」その瞬間アナスタシアの気配が変わった。「ここでこうして二人きりで言葉を交わすのは確かに初めてだったね」「こっちにこないのかい?」「いや、高いとこあんま得意じゃないし、安全対策が不完全だから嫌だ」「別に無警戒に近づいてきても突き落としたりしないよ?」「そういう所オリジナルそっくりだな」「いいかい?何度か言っているがそのオリジナルの魔女とやらとボクをあまり同一視しないでもらえないだろうか。はっきり言って知らない人と比べられるのは不愉快なことこの上ない。それがボク自身の創造主であったとしてもだ」
「時にお前、よくその鳥に無警戒に触れるな。ばーっと群がってきて全身ついばまれて殺されるとか怖くねえの?」「その君の想像の方がよほど恐ろしいまさかそれも経験則なんて言わないだろう?」「見た目は可愛い兎に元気よく飛びつかれ…そうになったことがあってな」スバルの話に無理強いはしないと言い、襟ドナも鳥から手を引いた。そしてどんな話がしたいのかスバルに聞く。すると「とりあえず、この場所と鳥との関係」と言う。
スバルの調査
それに「アナとして答えたのと同じ答えしか返せない。君と同じように鳥に導かれた。それまで心当たりなど一つもなかったと。ただ…」「ボクは正直な所、君に同じことを聞きたいと思っていた」「ボクは導かれるようにここへ足を運んだ、そして今この場所で君と対話している…塔へ戻る入口の前に立つ君と」
「君はこの塔の管理者であったシャウラとも顔見知りだった。少なくとも向こうは完全にそのつもりで君に接している。それを加味しこんなところで二人きりになった上で告げるのは卑怯だと思うが…」そして「ナツキ・スバル、君は何者なんだ?」「なんだよその質問」「プリステラに赴く以前に話は戻る、一年前、君が白鯨討伐と怠惰の討伐を成し遂げた論功式のあとだ。アナは君のことを調査したんだよ」
だが、ホーシン商会を率いるアナスタシアですらーー「君の素性はわからなかった。最低限の情報がやっとだったとアナがぼやいてたよ。それについては君というよりは君の周りの人間が何かしていた結果とは思うが」スバルの情報統制、そんな行いに陣営で絡んでいる人間がいるとすれば筆頭に上がるのはロズワール、オットー、クリンドあたりだろうか。
「なんにせよ、騎士ラインハルトがフェルトを見出した時、君を見かけたと証言がとれた。だがそれだけだ」それ以前の記録は存在するはずがない。故にアナスタシアの調査はスバルの足取りをほぼほぼ完璧に追いきっていた。「俺は…」「と、こうしてくどくど並べてはみたわけだが」「ーーあ?」どうにか言葉を絞り出そうとしたスバルに襟ドナが両手を広げる。
「アナとボクの君への認識は素性不明でありながら多大な功績を次々と積み上げる新人騎士…それがプリステラまでのものだ。その印象がプリステラでの魔女教との戦いとこの監視塔にきてからの経験でまた少し変わっている自信がある」「こうして夜更けに二人、誰の目もない空間で一緒にいることに不安を覚え、警戒したとしてもそれは仕方のないことを許してほしい」と広げた両手を閉じて微笑む。「君はシャウラと本当はどんな関係なんだい?」「シャウラとはここであったのが初めてだ。何も知らない」「三層の試験、あれほど早く君が解き明かせたのが偶然かな?」「…偶然だ」
狙撃ポイント
「それなら君がこうして一見してわからないように偽装された隠し通路を抜けたまたまボクしかいない状況で声をかけてきたことは?」彼女は質問を重ねる事でスバルにこう言っているのだ。「逆の立場になってみろ、か…」「それでもボクは様々な要因から君を敵対的な存在である可能性は低いと見積もっている。こうして胸の内を明かしたのはそれを示すための誠意と思ってほしい」
その心意気を買ってその言葉に頷いてやりたいのは山々だった。山々なのだが「どうやらボクの創造主は相当君の心に傷を残したらしいね」人工精霊エキドナの振る舞いが強欲の魔女エキドナと似通っていると思えば思うほど、どんな誠意を尽くされても本心から信じ難い。これこそまさに魔女の残り香と言ってもいい。「お前の言い分はわかった、納得は、した。信じるかどうかは別として…ここで俺とお前が会ったのは偶然だとして、このバルコニーは何のためにあるんだと思う?」「それについては仮説がある。三日前、砂海でのことは記憶にあるかな?」「花魁熊に追われるボクたちを白い光が襲った、あれがどうやらシャウラの仕業だったそうじゃないか。ならこの場所は」「ーーあいつが砂海を監視する為の狙撃ポイント?」
「おそらくこうした場所は外壁の至るところにあるんだろう。見たところこの空間はボクたちが塔に接近しようと試みた方角とは外れている」「鳥は?」「鳥については謎だ、こうして触っても反応はない。ただ、おそらく体温はあるようだから、作り物というわけではない。できれば解体してみたいが…」「殺したあと食べる分には…」鳥たちは物騒だと思える会話を続ける二人に無反応だが、その視線だけは相変わらずこの場の部外者といえるスバルたちへと向けている。しかし鳥解体はひとまず後回しに。
そしてアナスタシアの体についてスバルは聞くと1ヶ月も長く体に宿り続けている事に焦りを抱いていると言う。スバルはそんな体ボロボロの状態で王様になんてなれるのかよと言うと、アナは決して引かない。諦めることもしないと言う。スバルはそうまでして自分の国が欲しいのかよと聞くと、王座を諦められない理由があると言う。
聞かれた話
「ーー望まれたからだ」いつの間にか襟ドナは手すりから体を起こしこちらへ歩み寄りバルコニーの中央でスバルと正面から向き合っていた。動きの止まった二人に代わり、羽音だけが冷たい夜を切り裂いていく。羽音は後方から抜け翼を休める鳥たちの群れに加わった。また新たに一羽、鳥がバルコニーへとーー背後から。
「ーー今の話はどういうことなんだ?」立ち尽くす男の声に鳥たちは一斉に羽を広げた。そして豪雨のように凄まじい羽音を立てて砂丘へ飛び立っていく。大海原へ取り残されたような心地のスバルとエキドナ、そしてユリウス・ユークリウスを残して。
「ーー今の話はどういうことなんだ?」緊張感の張り詰める空間にユリウスは言葉を繰り返す。どこから話を聞いていたのか。直前まで交わされていた会話の内容は決して心構えなしに聞かせていいものではない。この監視塔攻略において、スバルと襟ドナの間に共有している秘密は根が深すぎる。「あーもうナツキくんたらあかんよ、そんな見え見えの態度して」「…あ?」呆気に取られたスバルに襟ドナは踊るようにその場でくるりと回ると「ごめんなユリウス。でも仲間外れにしようとしてたわけと違うんよ。うちはただ、この旅から戻ったあとのことでちょこーっとナツキくんとお話してただけ」
「緑部屋を出たんは、レムさんと地竜の子ぉがおったやろ?別に話が漏れる心配はないけど、なんや気分的に誰かのいる所で内緒話ってのも変やん?やから場所を変えて…たまたまおあつらえ向きなここを見つけた。それだけ」と胸の前で手を合わせ首を傾げる。その仕草はいかにもアナスタシアがやりそうだが、肝心の話の誤魔化し方はアナスタシアではありえないほどに低レベルだ。
そしてそれはーー「アナスタシア様ではないのだね」「君の事情を話してもらいたい。もう誤魔化すことも隠し立てしようとすることも不可能だ。いくら私でもそれは見過ごせない」ユリウスは折られた剣とは別の剣を抜き放ち、その先端を襟ドナへと突きつけていた。
打ち明ける秘密
「ユリウス、待て!それは…」「スバル、君からも言ってくれ。私は本当のことを聞きたいだけだ」動けない襟ドナ。その瞳が助けを求めるようにスバルを見るがここから挽回する術はスバルにはない。「ユリウスどこから聞いてた?」「アナスタシア様のお体のことからだ」その部分だけで十分感情的になって取り乱して当然の内容だ。
「ーーボクはアナと長年一緒にいる人工精霊だ。名前はエキドナ」「プリステラでの魔女教との戦い、あれ以降アナの精神は体の奥底で眠り続けている。そのため、今彼女の体を動かしているのはアナではない。ボクがアナを演じることで今日まですっと過ごしてきた」ここまでくれば誤魔化せないと考えたのか、事実を説明し始めた。そしてそれらの事をスバルだけが襟ドナと共有していたこと。
「…何故、スバルだけはその状況の共有を?」「彼が大罪司教の権能の影響も受けず最も状況の外にいた人物だった、それに人工精霊であるボクと、その出自を同じくするベアトリスと契約を交わした精霊術師でもある、もっともボクも打ち明けようと最初から考えてたわけじゃない。ただ…」「彼にはボクがアナを演じていると見抜かれた。だから話したんだ」その言葉にユリウスの瞳に動揺が走る。当然だスバルが襟ドナの演技に気づけたということはーー「関係の薄い、外部の人間にも気付けるはずのことを、一の騎士を自任する男が気付けずにいたということか…」「待て馬鹿!お前、そんな言い方はねぇだろ!」
「状況が…状況が悪かったんだよ!あんな大事件があって、お前はお前で切羽詰まってた!お前だけじゃねぇ、リカードとか、ミミ達だってそうだろ?俺が気付いたのは…なんか、とにかくたまたまなんだよ!」「その偶然を常に確かなものに昇華することが一の騎士の務めだ」「何が、一の騎士…だったらそんな面倒な肩書き…」「捨ててしまえ、などとは言わないでいてくれ。私は…今の私から何か一つ取りこぼすことさえ恐ろしい」何も言えないスバルにユリウスは首を横に振った。「話を戻そう。エキドナ、あなたの目的は?」「…この肉体をアナに返すことだ。このプレアデス監視塔へボクが君たちを案内した理由は暴食や色欲の被害よりそれを優先してのことだった」
納得
「つまり、現状はあなたにとっても望まぬ事態であると。そしてアナスタシア様を元に戻す術は見つかっていない。…仮にあなたを斬っても」「ボクが悪い精霊で、あれこれ理由を付けてアナの肉体を乗っ取ろうとしている…その推測を否定する証拠をボクは出すことができない。だから仮に君がボクの言い分を嘘であると断じ、ボクを消滅させようとしても止めることはできないな」
「ただ、おそらくその場合、意識の戻らないアナの抜け殻が残されるのなら御の字…最悪の場合、生命維持に支障をきたし、命を落とす可能性もある」「無論これはボクが命惜しさに苦し紛れに言った戯言の可能性もある。ボク自身、ボクが死ぬことが解決法でないとは断言できない。ボクが死ぬことでアナが長らえるなら、それでも構わないと思う気持ちもある。死にたくはないけどね」
「どうしてアナスタシア様にそこまでできる?」「ボクとアナとは不完全な関係だ。だから一般的な精霊と精霊術師の在り方に当てはめるのは正しくないのかもしれないが…ボクはアナが好きだよ。この子がまだ幼かった頃からずっと傍にいた。だから見捨てたくなんてないし、幸せになってほしい。それがボクの理由だ」「君に事実を明かさなかったのは、余計な混乱を招きたくなかったからだ、可能であればアナはボクの存在を隠し通そうと考えていたし、事実プリステラの一幕があるまでボクのことは隠しきれていた」そしてユリウスは襟ドナとアナスタシアの関係を理解し、今どうこうするのは軽率だと剣を収める。
そこでユリウスはアナスタシアのオドを消費し続けることに「それならば何故二層であんな無茶をしたんだ?」「アナスタシア様の体にかけた負担は決して軽くないはず。ここまで話していたあの行いだけがあなたの主張と食い違う」「それは…あれはボクも失敗だったと感じている。素人目でもお恥ずかしいが戦略的な観点からの判断だったんだよ」「あの時点で二層の試験官の殺意はわからなかった。下手をすれば君という戦力を失いかけなかった。無論アナの為にもそうだ。こちらに背中を向けるレイド…それもボクの目には好機に映ったんだよ」「ーーわかった。今後は軽挙は謹んでほしい。他でもないアナスタシア様の為に」「心得たよ」「なっ!?」「今の話でなんで納得が…」とスバルは冗談じゃないと床を蹴る。
言いたいこと
「私は納得した。エキドナも今度は軽挙は慎むと。これ以上何を言えばいい?これはあくまでアナスタシア様の陣営である私たちの問題だ。君が心を痛めることではない」「俺がどう受け止めようが俺の勝手だろうが!」「そして君が受け止め、私に私の問題は受け止めさせまいと?アナスタシア様とエキドナのことを語らずにいたように」「ーーっ」「すまない。言葉が過ぎた…だが事実だ」ユリウスは全く平静を保っていなかったとスバルは気付く。
明日改めてエミリア様達に話さなければと言い、ユリウスは襟ドナの手をとって中に戻ろうとする。「ユリウス!」スバルはとっさに声を上げていた。ユリウスは振り返らない。それが無性に腹立たしくて。「お前、俺に何か言いたいことねぇのかよ」スバルはエキドナの事をアナスタシアの事を黙っていた、この夜だって緑部屋で過ごす時間を交代すると約束し、それを反故にしてこうして密談をしていた。だからいっそ声高に吐き出せばいい、怒りをぶつければいい。
「ーーあるさ」「わかっている。君が何を考え、私に事実を隠していたのかはわかっている。悪意があるはずもない、あるのは配慮と心遣いだけだ、仮に逆の立場であってもやはり私は君に黙っていただろう」「だが、それでも」「私はアナスタシア様にも、君にも、騎士たり得ぬだと思われたくなかった」
スバルはバルコニーに一人残り冷たい風に当たりながら呆然としていた。直前のユリウスとのやり取りに打ちのめされ動く気力が湧いてこなかった。「ーーバルス?」「…姉様?」通路の先から姿を見せたのはラムだった。「ずいぶんとしょぼくれた顔ね。みっともない」「…会うなりいきなりだな。こんな時間に何してんだ?」「それはそっくりそのままお返しするわ」「どうせまたレムに聞かせても仕方のない愚痴をこぼしてたんでしょう?いくらラムの妹が可愛くて寛容でも無理難題ばかり押し付けるはやめなさい」「…ああ、そっちか、まぁそうだよな」「ーー?」「情けない顔をするのはやめなさい」「しょぼくれた顔で情けない顔で、ただでさえ低い男が下がるわよ。そんなだとバルスを騎士にしているエミリア様の品格が疑われるわ。改めなさい」と俯く顔をラムに指で弾かれる。
そしてラムにこんな時間まで何をしてたか聞き、考えると「二層への階段、か?」とスバルが言う。まさか上に行ってたんじゃと聞くと、そこまで無謀じゃないと話す。
レイド攻略の可能性
そしてラムはユリウスとなにかあったのかと聞く。そんなにわかりやすいかと聞き返す。そして再度なんでここにと聞くと、二層へ上がろうとしてみただけだと言う。あれは規格外の化け物でガーフが可愛く見えると言う。そして「確信したわ。手段を選ばなくなれば、あっちも手段を選ばなくなるだけ。やっぱり話し合った通り、攻略には本気にさせない程度に満足させる必要があるわね」と言う。
それから、ラムは竜車に戻ると話すもスバルは俺は…と言葉を濁す。そしてラムと別れる。竜車には戻れない。緑部屋にも行きづらい。となると朝まで時間をゆっくり休めるか、あるいは有意義に過ごせる場所が必要なのだが。第一は食事のために皆が集まった荷物置き場となった部屋。寝床を作るくらいの融通は効くだろう。あとは二層の攻略、レイドの攻略について考える。これは一番建設的な判断。
彼の攻略は皆で話し合った通り、彼に本気を出させずに彼を本気で満足させる手段を見つけるというかなりアバウトなもの。せめてそのアバウトさを少しでも減らせる可能性があればーー。「ーーそうだ」「これがうまくはまれば…」確実とは言えないものの、状況を大きく進める一手になり得るはずだとスバルは急ぎ足にその場所へと目指す。夜の監視塔にスバルの靴音だけが響く。たった独りの靴音だけが。
「ーースバル!ねえスバルってば、大丈夫なの?」「ってうおわぁ!?」目を開けた瞬間、すぐ間近にあった美貌に驚かされ、スバルは横に転がった。「んぎゃあ!」「スバル平気!?なんでそんなにいきなり転がったの!?」「い、いや俺も別にいきなり転がろうと自主的に判断したわけじゃ…」スバルは目を瞬かせて困惑した。そこは緑色の部屋だった。
スバルはどうやら、その部屋の真ん中、草で編まれたベッドに寝転がっていたらしい。「どこか強く打ったりはしてないみたい。ホントによかった、でもすごーく心配したんだから」「エミリア、そんな言い方だとスバルは反省しないかしら。もっときつく言ってやらないと、ベティーたちの心配ぶりがスバルに伝わらんのよ」「そうよね、ベアトリスもこう言ってるでしょ?スバルが見当たらないって大慌てで倒れてる所を見つけて泣きそうだったんだから」「言わなくていいことまで言わなくていいかしら!」と目の前でコントのようなやりとりが繰り広げられる。
異世界召喚
スバルは振り返った。地べたに座り込むスバルのすぐ後ろに何か巨大な生き物の気配。それは大きなトカゲだ。それがあろうことか、スバルにすり寄り鼻先を擦りつけてきている。随分と人懐っこいとスバルはそのトカゲの頭を優しく撫でた。そしてため息をつく。「つまり、これはあれだな」冷静に落ち着いて、ゆっくりと、息と共に言葉を吐き出した。
そんなスバルの様子に正面にいた二人の少女が首を傾げる。「ーースバル?」と同時に名前を呼ぶ。そしてスバルは大きく口を開け、叫んだ。「異世界召喚ってヤツーーーぅ!?」
幕間『ーー古い記憶』
女、一人の女がいた。女は感情的だった、女は常に泣いていた。痛みに敏感で常に泣き続けていた。嘆き悲しむ理由は一つ。自分の無力さが許せなかった。女の周りには常に争いが満ち溢れていた。何度声を上げてもその悲しみは決して終わろうとはしなかった。だから女は運命を呪った。呪った挙げ句に女は気付く。いくら泣いても無駄なのだと。それに気付いた女が欲したのは純粋な力だった。他者を圧倒しすべてを薙ぎ払う力を欲し、女は自分を限界に投じて痛めつけ、得られる限りの力を得んと、求められる限りの強さをと奔走した。
戦場に立った女は戦いをやめろと声高に叫ぶ。すべての力を力でねじ伏せ奔走した。戦いは止まらない。努力も奔走も全ては無駄で涙は止まらない。しかし同時に湧き上がる別の感慨があった。胸の内をどす黒く染め、それ以上に視界が真っ赤に頭が白くなるほどの激情。その感情の名前を人は憤怒と呼ぶのだ。鉄拳を喰らわせてやろう。いつしか女は立ち上がり、再び走り出していた。
まだ戦いを続ける人々のど真ん中に飛び込みその顔面を殴り飛ばし叫ぶ。女の声に初めて戦場に動揺が走った。大地が割れるほどの拳、空が唸るほどの蹴り、その全てが人を生かした。傷がふさがり、悲鳴が止まり、温もりに膝が折れ、戦いに意味はなくなる。人々の涙は止まった。人々は女に感謝した。声を上げ手を振り、笑って。だがそのとき既に女の姿はどこにもない。当然だ。女にはまだやるべきことがある。誰も泣かない何も奪われないそんな世界を求めて。走り続け拳を振るい続ける。いずれすべての涙が止まるまで。自分の頬を濡らす熱い雫が止まるまで。『憤怒の魔女』は悲しみへの怒りを燃やし、ずっとずっと走り続けた。
考察・解説
シャウラ
プレアデス監視塔の番人をしているというシャウラ。なぜかスバルの事をお師様=フリューゲルだと思っており、その判断材料は『臭い』だと言います。
スバルで『臭い』と関わりある話なら、魔女の残り香など死に戻りすることで濃くなる臭いですよね。もしくは魔女因子。『臭い』でフリューゲルと判断しているのなら、フリューゲルも死に戻りできる存在なのか、もしくは魔女因子を持っていた存在なのかということですよね。
また、シャウラは『賢者』ではなく、ただのシャウラでした。フリューゲルに功績を押し付けられてきたということが22巻では語られていました。
そして『スコーピオンテール』の髪型や、『シャウラ』の星の語源が『針』なこと、針といえば、シャウラが放ったヘルズ・スナイプですよね。23巻ではこのシャウラのさらなる秘密が出てきます。
フリューゲル
そして、先程のシャウラの説明でも出てきたフリューゲルについて。この話を見るとどう考えてもスバルと同じ何かを感じます。フリューゲルは『フリューゲルの大樹』を植えて『フリューゲル参上』と書いていたそうですが、将来スバルが白鯨を倒す為に植えたのではないかと思ってきてしまいます。
WEB版でしか語られませんが、4章の魔女たちの茶会でセクメトがフリューゲルの名前を出したり、100年前のジュースが怠惰の魔女因子を取り込む際に『お許しくださいフリューゲル様』と言っています。
そして6章でのスバルのことをなぜかフリューゲルと思っているシャウラ。謎は深まるばかりですが、400年前にもスバルはフリューゲルとして存在したかもしれないなどの考察もあります。真実はまだまだ明かされていません。
プレアデス監視塔と試験
スバル達が到着したプレアデス監視塔の正式名称が『大図書館プレイアデス』だと判明しました。そしてスバルは『プレイアデス七姉妹』の逸話からゼロ層があると見抜きました。
1層:マイア
2層:エレクトラ(レイド)
3層:タイゲタ(死者の書)
4層:アルキオネ(緑部屋)
5層:ケラエノ(入口)
6層:アステローペ(地下)
0層:メローペ(さらに地下?)
そしてゼロ層についてはシャウラによれば「まだ条件が満たされてないッス。お師様は道の途中であーしに会いに戻ってきてくれてそれで満足ッス。だからゼロ層はダメッス」との事なので、まだ中身は不明です。そしてスバル達は一度、地下に飛ばされましたよね?スバル、ラム、アナスタシア、パトラッシュがおり、右の道はなぜか4枚目の扉が開かなかった魔女の瘴気に狂わされた場所、左の道は異形のケンタウロスの火葬場へと繋がっていました。
さらにプレアデス監視塔には『試験』がありました。そもそもこの試験を突破した最後には何があるのかということですよね。暴食や色欲の被害者の救出方法やアナスタシアに体を戻す方法が知りたい一行でしたが、その目的が叶えられるとは、もう思わなくなってきましたね。1つ目の試験は『モノリス』2つ目の試験は『レイド』でした。
試験は全部で3つあり、エキドナの試練も3つで何度も挑戦できたり似たような点がありました。さらにプレアデス監視塔にたどり着けるのも、1つ目のモノリスの試験もスバルでなくては無理な内容でした。シャウラがスバルをお師様と勘違いしてくれなければ無理ですし、モノリスもオリオン座の知識がないと無理でした。スバルの為に用意された、スバルにしか辿り着けない場所なのか・・・
バルコニーと鳥
どうしても怪しいと感じてしまうのが、隠し通路の先に誘導した鳥たちです。触ってもじっと動かなかったり、生き物ではないように鳴き声も出さなかったり。
この鳥たちがラムの千里眼で見た、プレアデス監視塔に向かってまっすぐ飛んでいた鳥だという話だったと思いますが、なぜここに鳥がいるのか。色欲の大罪司教のカペラが擬態してるという考察をしている方もいるようです。
WEB版の最新話時点でも、この鳥についてはまだわかっていないことなので、本当に謎ですね。
レイド・アストレア
そして、今回初登場したレイド・アストレア。23巻の表紙がレイドになっています。ちなみに表紙のレイドの後ろの龍はボルカニカではありません。ボルカニカは青白い鱗ですし死んでません。
レイドから剣聖の家系が始まったとされており初代剣聖です。ラインハルトの先祖になりますが、ラインハルトの気品の高さからは考えられない性格ですよね。レイドの異名『棒振り』とは得物を選ばない事からということでしたが、なんと試験では、箸で戦っていましたね。
そしてなぜ、死んだはずのレイドが試験官として登場したのか、この謎はその後解き明かされます。
ちなみに作者によれば強さ的にはレイドよりラインハルトの方が強いそうです。ユリウスでも全く歯が立たなかったレイドですから、それより強いラインハルトの強さが改めてわかりますよね。
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まとめ
ということで今回22巻の内容をまとめます。
・シャウラはスバルのことをお師様、フリューゲルと勘違いしている
・シャウラは賢者ではなく、フリューゲルの功績を押し付けられていた
・スバル達を監視塔から攻撃したのはシャウラのヘルズ・スナイプ
・三層のタイゲタの書庫では『死者の書』で死者の記憶を追体験できる
・三層のタイゲタの試験はモノリスを上から見下ろす事でオリオン座が見え、リゲルに触れる事で突破
・二層のレイドの試験は、全盛期のレイドを突破しなくてはいけない
・塔のルールがあり、違反するとシャウラがキリングマシーンになる。「一、試験を終えずに去ることを禁ず。二、試験の決まりに反することを禁ず。三、書庫への不敬は禁ず。四、塔そのものへの破壊行為を禁ず。」五はないと語る。
・料理下手だと思われていたラムは実は昔からやれば料理もできていた
・「異世界召喚ってヤツーーーぅ!?」は、スバルの記憶がなくなったということです・・・
・最後の幕間は、ミネルヴァの死者の書になります。
次回、23巻もお楽しみに。
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