新海誠監督の「すずめの戸締り」は日本各地に点在する後ろ戸をの扉を閉じていく中で主人公の岩戸鈴芽が成長していくストーリーです。
今回の記事では後ろ戸から出現するミミズは実在するのか、なぜ災厄が起きてしまうのか、出現した場所や元ネタについて書いてきます。
ミミズは実在する?
『鹿島神宮』 要石
— KJ (@cool_japan1016) September 13, 2015
要石が地中で暴れる大鯰を押さえてるという話が一般的だが、鯰が地震を起こすとなったのは、江戸時代以降らしい。鎌倉時代には地震蟲(むし)の絵が残っています。10本足の「むし」だそうだが、何だかよく分からない絵です。 pic.twitter.com/jlqmbf3QBR
すずめの戸締りではミミズは赤黒いエネルギーの塊で災いをもたらすものとして描かれており、作中では地震・震災の元凶となっています。
一般的にナマズが地震を起こすとイメージされていましたが、古来より日本では龍状の生物が地中にいると考えられており、地震が起きる原因が中国の地中にいる生物が暴れるからだという影響を受け同様に考えられていました。江戸時代に描かれた「大日本国地震之図」では龍が日本を囲んでいる絵が描かれており、その姿は龍というより蛇の胴体に髭が生えたような感じです。
なので日本では作中に登場したミミズのような謎の生物が実在すると考えていたのかもしれませんね。
ミミズでなぜ災厄が起こる?
ミミズは赤黒く描かれており一目見ただけで善いものではないと分かります。ミミズは本来であればあの世である常世を目的も意思もなくうごめく巨大な力なのですが、後ろ戸を通ってしまうと災厄を起こすものです。
後ろ戸から出てきたミミズは土地一帯の地気を吸い上げて膨張し、重さに耐えきれなくなると勢いよく地上に倒れその時に地震が起きます。ここで言う地気は地面から立ちのぼる気になります。
ミミズが現れる後ろ戸は主に廃墟で開かれることが多く、廃墟のイメージとして見捨てられた場所というのがあります。後ろ戸が開かれるのが廃墟となっているのは、そこにある悲しみや寂しさといった負の想念が徐々に溜まり歪みとなりあふれ出し、ミミズはそれらを象徴した塊であり災厄を起こす原因として描かれているのだと思います。
ミミズの元ネタモデルは?雲やナマズ?
「鹿島神宮の宝」その5「鯰絵とは?」
— 茨城県立歴史館 (@Ibaraki_rekishi) April 25, 2020
幕末、ペリーが来航した頃、安政2年(1855)の大地震直後に江戸で作成・販売された多色刷り版画です。鹿島の神・要石・鯰の図柄が多いので鯰絵と呼ばれます。鯰が地震を起こすが、普段は鹿島の神が要石で抑えているという俗信から始まっています。#鹿島神宮#茨城 pic.twitter.com/jGBVcWbYP6
元ネタと言われているナマズ
ミミズの元ネタについては色々ありますが、鹿島神宮のナマズがもっとも有力です。作中では重要な役割を持つ「要石」が登場しますが、実際に茨城県にある鹿島神宮には「鹿島要石真図」という江戸時代の浮世絵があり要石と祀る鹿島神宮の下に剣をもち大鯰を抑えている様子が描かれています。
作中でも鈴芽が草太の家に行った時に閉じ師たちが残した記録を見ているシーンがあります。そこには2つで一対になっていて、ミミズの頭と尾を抑えているところが描いてありました。
日本における要石は先ほどの鹿島神宮と対となる千葉県にある香取神宮の要石があります。伝説では鹿島神宮の武甕槌神がナマズの頭を香取神宮の経津主大神がナマズの尾を抑えているとされている点から、ミミズの元ネタなのではと言われています。実際に新海誠監督は災害を具現化するにあたり龍や大鯰を参考にしていると語っていました。
ミミズと雲の関係
日本では大きな地震が起きる前に珍しい形の雲が出ると言われています。地震雲の分類した書籍も発売されており、その本によると現れた雲の形状を石垣状、レンズ状、点状、綿状、縄状の低い雲、白蛇状、断層状に分類されています。
そこでミミズが出てくる時を見てみると赤黒い線状の雲みたいな形をしています。作中でミミズが出ると地震が起きると言われているので、地震の予兆として現れる地震雲のような意味もあるのかもしれません。
確かにミミズが出現した時は金色の線を出しながら巨大な雲のように膨れ上がっていく様子は不気味でしたね。
ミミズが出現した場所は?
ミミズは後ろ戸と呼ばれ常世に通じる扉から出てきます。ここでは作中でミミズが出現した場所について書いていきます。
上記の場所でミミズが出現していますが、東京でミミズが出現した時は出現場所と後ろ戸は別に場所にありました。
東京でミミズが出現した時に鈴芽は御茶ノ水にある草太のアパートにいました。そして地震警報が鳴り外に出るとミミズが出現しており、御茶ノ水駅に向かい聖橋に着きます。そこで二人は出てきたミミズに飛び乗るので、出現した場所は御茶ノ水駅と秋葉原駅の間にあるトンネルということになります。
次に後ろ戸の場所は牛ヶ淵だと考えられます。鈴芽が草太をミミズに刺した後、水の中に落ちてしまうのですが実際は石垣に囲まれたところに倒れていたのです。その時にスマホで位置を確認すると牛ヶ淵と表示されます。
牛ヶ淵は東京都千代田区にある北の丸公園にあるお堀の一つです。位置的には桜の名所で知られる千鳥ヶ淵の反対側にあたり、皇居の北側にあります。
後ろ戸とミミズが出現した場所は距離があるので、どうやって移動していたのかも気になりますね。
ミミズと東日本大震災の関係
「すずめの戸締り」見ました😭
— ハイセ / ゲーム実況者 (@_haisegame_) February 18, 2023
震災のことについて真面目に考えさせられる内容。視聴中に考察しながら見られるのもあってめちゃくちゃ面白かった…
アニメ映画で泣きそうになったの割と初めてレベルかも、感動で泣くってより感情移入でグッと来る感じかな?
あと草太さんはガチのイケメン、ズルい pic.twitter.com/P6KotWsC3s
すずめの戸締りは東日本大震災をテーマしていると公式に記載があり、作中にも3月11日という日付や宮城が登場します。
作中で草太のアパートで「100年前に1度開き、関東一帯に大災害を起こした」と鈴芽に話しているシーンがあり、ここでの大災害は年代から考えて関東大震災のことだと思われます。すずめの戸締りでミミズは地震を起こす原因として描かれているので、直接的な表現はないですが東日本大震災を引き起こしたのもミミズでしょう。
内容は東日本大震災をテーマにしているのでミミズと東日本大震災は関係が無いとは言えませんが、地震がミミズのせいで起こったとしてしまうと当時被災した方々の気持ちを考え作中ないでは明確な表現を避けたのだと思います。
また新海誠監督は地震の記憶が風化してしまうことに危機感を持っており、当時のことがトラウマとなり思い出すのも辛いと思っている人がいるかもしれないが、過去と向き合い乗り越えて欲しいというメッセージが込められていると思います。
まとめ
後ろ戸から出現するミミズは実在するのか、なぜ災厄が起きてしまうのか、出現した場所や元ネタについてについてまとめてきました。
ミミズの正体は地震を引き起こすきっかけとなるエネルギー体とされていて、ミミズの元ネタも諸説ありミミズについてはネット上でも多くの考察がありました。
作中で「常世は見る者によって姿を変える」と言われているので、ミミズはその人にとって乗り越える過去なのかもしれません。